週刊朝日 2023年3月10日号より
週刊朝日 2023年3月10日号より

 投資情報会社フィスコの仲村幸浩アナリストは、金融政策が正常化に向かうことで恩恵が大きい銀行株を筆頭に挙げる。

 伝統的な銀行業は、貸し出しと預金の金利差(利ざや)で稼ぐが、超低金利はこの仕組みを破壊し、銀行のビジネスを苦しめてきた。仲村さんは「利ざやの改善に期待している」と話す。ロシアのウクライナ侵攻で部品供給網のサプライチェーンが混乱したことで、企業が工場を国内へ戻し、その建設資金を借り入れる必要が出てくることも、銀行にはプラスとみる。

 仲村さんが注目するのは三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなどのメガバンクで、特に、みずほフィナンシャルグループが筆頭という。メガバンクのなかでも国内向け貸し出しが多く、株価の出遅れ感があり、上昇余地が大きいという。りそなホールディングスも国内企業向け貸し出しが多く、利ざやの改善が期待できるという。

 資金運用環境の改善期待で生保株も注目だという。仲村さんは、なかでも第一生命ホールディングスとT&Dホールディングスを挙げる。

 また、仲村さんは、金利上昇懸念で株価が売られすぎている不動産株にも注目する。個人向け住宅やマンションの販売が好調で、収益性が改善しているほか、株主還元の継続も期待できるという。

 前出の広木さんは、新型コロナウイルスの流行による行動規制の緩和で経済活動の再開にも期待する。旅行やレジャー、消費関連にも注目。関連銘柄は大手を挙げ、三越伊勢丹ホールディングスと高島屋、オリエンタルランド、ANAホールディングスと日本航空、東日本旅客鉄道(JR東日本)と東海旅客鉄道(JR東海)という。

 前出の窪田さんは、金融政策関連の銘柄なら「金融セクターに尽きる」と話す。個別の銘柄を避けるなら、銀行に特化したETFもあるという。YCCの撤廃後は「金利上昇なら円高が進む可能性がある」と話し、海外からの調達の多い企業に注目する。具体的には、ニトリホールディングスやワークマン、サイゼリヤを挙げる。

 黒田総裁の任期は4月8日まで。株式市場では総裁交代に先行し、関連銘柄を物色する動きが続きそうだ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2023年3月10日号