金融政策が正常化に向かう中で恩恵を受けるとみられる企業
金融政策が正常化に向かう中で恩恵を受けるとみられる企業

 三井住友DSアセットマネジメントの市川さんは「表向きは金融緩和を継続し、金利のゆがみを修正していく可能性が高い。早めにYCCの許容変動幅を再拡大し、コントロールそのものを事実上なくしてしまうとみている」と話す。

 日銀がYCCによる長期金利の誘導をやめるとの見方は、金融市場でほぼコンセンサス。一部の海外投資家は国債を売り浴びせ、特に金融機関から国債を借りて売り、値下がりしたところで買い戻して返す、いわゆる“空売り”をしているようだ。これにより、国債の価格は下落(利回りは上昇)圧力がかかる。日銀が国債を買い入れるYCCで強力に金利の上昇を抑えている格好だ。

■政策は緩やかに正常化に向かう

 前出の市川さんは、YCCによる長期金利の許容変動幅を±0.8%まで引き上げると市場金利の水準になると指摘し、「±1%への拡大はコントロールというより、事実上、形骸化」という。

 焦点はYCCによる長期金利の許容変動幅の修正時期。黒田総裁にとって最後となる3月の金融政策決定会合か、新総裁を迎えて最初の4月下旬か、さらに先になるのか。

 前出の上野さんは「7月かなと思う」と話し、誘導目標を10年国債から5年国債に短期化する可能性もあるとみている。前出の窪田さんは「かなりの確率で今年夏までには」と予想する。

 YCCが事実上、形骸化すると、金利は上がりやすくなる。それに呼応して、国債価格は下落し、国債を大量に保有する日銀や金融機関は含み損を抱えるリスクも出てくる。市川さんは当面、「日本の成長率が高くないので、金利はそれほど上がることはない」とみている。その先には、日銀によるマイナス金利の撤廃が視野に入ってくる。市川さんは「これは金融引き締めのメッセージになるので、当面は維持すると思う」と話す。

 金融市場は次期日銀総裁の下で、金融政策が緩やかに正常化に向かうとみるなかで、個人投資家はどんな株に注目できるのだろうか。

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