政府は日銀新総裁に植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した
政府は日銀新総裁に植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した

 4月の日本銀行総裁の交代で、金融政策は時間をかけ正常化に向かうと金融市場はみている。注目される株は何か、専門家に聞いた。

【図表】日銀総裁交代で注目される銘柄はこちら

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 日銀の黒田東彦総裁(78)は4月で2期10年の任期を終える。岸田文雄首相は後任に、経済学者で日銀審議委員も務めた植田和男氏(71)を選んだ。

 植田氏について金融市場では、「しっかりした人で素晴らしい人選」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)、「キャリア的には何の問題もない」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)、「極端な主張を持っておらず、バランスのとれた人で、柔軟に対応できるとの見方が多い」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)などと、ひとまず好意的に受け止められた。

 日銀の金融政策は、異次元の金融緩和、量的質的緩和、マイナス金利など、一般人には複雑で理解するのが難しくなっている。専門用語はともかくとして、どのような金融政策が行われてきたのか、まずは簡単に振り返ってみよう。

■金融市場では弊害や副作用も

 日本は1980年代後半、バブル経済に見舞われ、株価や不動産価格などが高騰した。90年夏になると、サダム・フセイン大統領が率いるイラクがクウェートに侵攻し、投資家は世界景気の先行きに不安を感じ始め、金融市場のムードが変わり始めた。政府による不動産業界への融資規制や、日銀による利上げなど“バブル退治”もあり、90年代は株価が暴落した。

 このバブル現象を後に「根拠なき熱狂」と指摘したのは、アラン・グリーンスパン米連邦準備制度理事会議長(87~2006年)。日本と違い、米国の金融政策を巧みに操り、オーケストラの指揮者に例えられて「マエストロ」と呼ばれた。

 日本はバブル崩壊後、物価下落が続くデフレ経済に長く苦しんだ。安さを求める消費行動が広がり、企業は商品やサービスの価格を抑えるコスト削減のため、人件費にも手をつけた。正規雇用者の賃金引き下げは難しく、非正規雇用者を採用する動きが広がった。労働市場には、低賃金で雇用の不安定な非正規雇用者が増えた。若者は結婚を控え、出産を見送る動きが出るなど、少子化の要因の一つとも指摘される。

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