小泉純一郎氏(左)・小泉進次郎氏
小泉純一郎氏(左)・小泉進次郎氏

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 ここからは、主な世襲政治家の最近の言動や情勢をおさらいしよう。

 郵政民営化問題で脚光を浴びた小泉純一郎元首相(81)の次男、進次郎衆院議員(41、当選5回)は2019年に38歳という戦後3番目の若さで初入閣を果たすと、カリスマ性を持つ純一郎氏の後継者として期待を集めた。

 しかし環境大臣として施行したレジ袋の有料化やプラスチック製品の削減義務化などの評価はいまひとつ。また原発事故による汚染土の最終処分場について問われた際の「30年後の自分は何歳か、発災直後から考えていた」発言など、ときに意味不明で独特な言い回しが「ポエムのよう」「進次郎構文」などと揶揄(やゆ)され、最近は影が薄い。

福田康夫氏(左)・福田達夫氏
福田康夫氏(左)・福田達夫氏

 祖父・赳夫氏と父・康夫氏が首相を務め、自身もその座に就けば3代にわたる首相就任となる福田達夫衆院議員(55、当選4回)は、一昨年の総裁選で岸田氏を支持し、閣僚未経験ながら総務会長に任命された。だが、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で旧統一教会と党所属議員の関係について会見で問われた際に「何が問題か僕はよくわからない」と発言。厳しい非難を浴びた。

 約半世紀にわたって自民党を取材してきた野上忠興氏はこう語る。

「今の世襲議員は野党にもまれたり党や派閥の幹部から、どつかれたりする下積みの苦労もないまま、若くしてチヤホヤされる傾向がある。『選挙に強い』が政治家としての成長を止めるというマイナス要素に働くことになる。一選挙区一人の小選挙区制になったことで、地元の政財界にしても選択肢がなくなり、その一人に頼ることになるため選挙基盤が盤石化してしまう。同じ世襲政治家でも小選挙区制以前の中選挙区制下で落選経験を持つ安倍晋太郎さんから、『自分に慢心があった。あの落選で目が覚めた』と聞かされたものだが、中選挙区制には、そうした緊張感があった」

■山口で代々続く安倍家のゆくえ

 衆院小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法が昨年末に施行され、選挙区が4から3に減る山口県では、この4月にダブル補選が行われる見通しだ。

 安倍氏の死去で議員不在となった4区は、妻の昭恵氏の立候補を推す声があったものの、昭恵氏が固辞。現職の下関市議が立候補を予定している。

 一方、2区は安倍氏の弟、岸信夫首相補佐官(63)が健康状態の悪化を理由に議員辞職。後継に長男で自身の秘書、信千世氏(31)を指名した。4区で途絶える安倍家の世襲の系譜を2区で次世代につなぐ構えだが、ことは簡単ではない。全国紙の政治部記者は言う。

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