申告会場では、スタッフがスマホを使った申告を手伝っていた(昨年の様子)
申告会場では、スタッフがスマホを使った申告を手伝っていた(昨年の様子)

 食費や電気・ガス代は上がるのに、給料や年金は思うように増えない。家計は厳しくても、税金の取り立ては容赦がない。2月16日から始まる「確定申告」で、払いすぎた税金を賢く取り戻す方法はないのだろうか。

【図で確認】今回の確定申告にかかわる主な変更点はこちら

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「昨年3月末に会社をやめてからも、現役のころのつながりでちょくちょく仕事はもらっています。やっぱり年金だけじゃ不安なので。ただ今回から確定申告を自分でしなければならないと思うと、ちょっとおっくうですね」

 千葉県に住む男性(68)はこう漏らす。昨年3月まで都内の印刷会社に勤め、主に得意先回りの営業を担ってきた。少人数体制のため60歳を超えた後も頼りにされて会社に残ったが、後進も育ち、退職を決断。今では妻とのドライブなど、現役時代に思うようにできなかった趣味を楽しんでいる。

 月数万円と、ささやかながらも現役時代からの副業を続けるのは、そうした費用の足しにしたいと考えているためだ。

「物価高や将来的に年金が減る不安を考えると、面倒でも確定申告はしたほうがいいとは思っています。蓄えも少なく、今は何でもできることをして負担は少しでも抑えたい」

 確定申告は所得の合計などをもとに課税金額を確定させるもので、自営業者らが対象となる。今回の期間は3月15日までで、2カ所以上の会社から給料をもらっている場合や、給料以外の雑所得が年20万円を超える場合は会社員らも対象だ。

 一定額を超す医療・介護費がかかったり、寄付をしたりした場合など、払いすぎた税金があれば、申告をすることで取り戻すことができる。

 年金が年400万円以下など「確定申告不要制度」の対象になる年金生活者でも、申告したほうが有利になる場合がある。税金が取り戻せるだけでなく、課税対象の所得を減らせれば連動して住民税が減ったり、低所得者向けの支援制度が受けやすくなったりする可能性がある。

 まずは今回の確定申告に関わる変更点をみてみよう。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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