酒井さん 「人生の目的をどこに置くか次第だと思います。結婚して幸せな家庭を築くことを人生の最優先課題にするなら、勉強なんてしないで今すぐマッチングアプリを始めた方がいい。僕自身は大学で学問がしたかったし、物事をしっかり考えられる人たちとも話したかったので、必要だったと思っています」

鈴木さん 「(学歴は)必要ないと思います。人生はくじ引きの繰り返し。たまたま親ガチャに当たっていい親のもとに生まれ、いい学校に通い、いい塾に通えたからこそいい大学に入ることができたというだけです。受験だってガチャみたいなもの。たとえ試験に落ちたって、再受験して同じ大学に合格する人達はたくさんいます。そう考えると、学歴という概念自体にさほどの意味は感じません。それよりも、より幅広い環境で育ってきた人達を受け入れる土壌を作ることの方が、社会の多様性を広げていく上でよほど大切だと思います」

 進学が遅れたことによる悩みはないのか。

酒井さん 「僕が京大を志望した理由の一つは、浪人生も受け入れてくれそうな懐の深さを感じたから。実際、入学してみると留年生も多く、1~2年の遅れは当たり前のように許される雰囲気でした」

杉山さん 「東大と京大で空気に違いもあると思います。東大は、基本的に留年者は多くありません。僕の代の留年はゼロ。下の代も何だかんだ進学はしています」

 最後に、人知れず悩む多浪生へのメッセージを聞いた。

鈴木さん 「『受かるまでやりたい』というのは、人の心の奥底に少なからずある心理だと思います。ならば、それにこだわるのも一つの道。十人十色の進路があっていいと思います」

杉山さん 「入学後の1年半を振り返ると、『こうなってるとは思わなかった』ということの連続です。それは浪人に関しても同じで、あまり将来を決めつけない方がいい。計画を立てすぎず、そのときの流れに身を委ねて行く方が、そこそこ楽しめると思います」

竹末さん 「今の話と対照的ですが、私自身はすごく不安症で『何が起こるかわからない』と思うと動けなくなるタイプ。そんな私がこれまでの人生で唯一、自分の力でどうにかすることができたのが勉強です。努力をすることは自分を保ち続ける、よすがのようなものでした。結果はどうあれ、何かを目指す行為にはそれ自体、意味がある。自分を見失わずに進んでいってただけたらと思います」

(構成 本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日オリジナル記事