室井佑月
室井佑月

 作家の室井佑月氏は、防衛費増額と困窮者への支援について物申す。

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 12月3日、「TBS NEWS DIG」で「自民党会議 各県政調会長から防衛費財源・増税論に反対の声」というニュースが流れた。

 萩生田政調会長と各地の自民党の政策責任者が、意見交換する会議を開催し、その場で、「防衛費増額を巡る増税論議について、来年春に統一地方選挙を控える各県の政調会長からは『国民生活が厳しいなかで増税には頼らないでほしい』といった声が複数上がったということです」。

 自民党内からもこういった意見が上がるのはいいことだ。

 やっぱり、民主主義において、選挙は大切なことなのだ。いいや、各地のこれから選挙を控える関係者らが、選挙のためだけに増税反対といったとは思えない。

 あたしは野党を応援しているので、自民党の彼らと考え方は違う。けれども彼らだって、自分らの自治体、そこに住む人を守りたいという気持ちはあるのだろう。

 なにしろ、

「政府は2023~27年度の5年間の防衛費について、総額40兆~43兆円をめどとする方向で調整に入った」(12月2日付朝日新聞「防衛費 5年で40~43兆円」から)

 これって、過去最高水準だった19~23年度の25.5兆円の1.5倍以上。19年から最高水準といわれる防衛費を使って、あたしたちの暮らしは画期的に安全になったといえるか。そこも微妙であるし、なにより国の財布は一つ。なにかを増やすということは、なにかを減らす、もしくはツケを棚上げにする、ということである。

 この国に打ち出の小槌(こづち)でもあるなら、防衛費の増額も、国土強靱(きょうじん)化でも、なんでもやったらいい。自然災害に対する強化などはぜひ、やって欲しい。小槌があるなら、どこまでも。

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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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