イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 高村氏はこの条件を「やむを得ない」と判断した。

 だが、北側案を安倍首相に示すと、「これでは現実には集団的自衛権の行使はできない」と受け入れなかった。高村氏は、「これを受け入れないと自公連立が持続できない」と強く訴え、岡崎氏も懸命に安倍首相を口説いて、やっと同意を取りつけた。

 自民党が多数派だから、この安保法制は成立したのだが、野党はもちろん、少なからぬメディア、有識者たちの批判は強かった。

 憲法違反、というわけだ。

 そこで私は、「反対」を打ち出している代表的な2紙のトップ記者にこう言った。この安保法制を否定すれば日米同盟は維持できなくなる。日米同盟が破綻すると、日本の防衛力を2倍、3倍に拡大しなければならない。現在は米国の核の傘に守られているが、自前の核兵器を持たざるを得なくなるのではないか、と。いずれも不満そうではあったが、何とか同意してくれた。そして、何人かの学者も同様に説得した。

 こうした経緯があったことをここに記しておきたい。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年12月16日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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