ナラ枯れしたトトロの森周辺の樹木(鈴木裕也撮影)
ナラ枯れしたトトロの森周辺の樹木(鈴木裕也撮影)

 林野庁の調査によると東北地方で被害が顕著だが、近年は関東地方でも起きている。関東で特にナラ枯れ被害が多いのは神奈川県だ。

「17年に初めて5つの市町で被害が確認され、その後拡大。21年には全33市町村のうち開成町を除く32市町村に広がっています。被害本数で言えば、20年は21市町で1844本だったものが、22年には2万8991本と約15倍に増えました。たとえは適切ではないかもしれませんが、新型コロナウイルスの第1波の時のように急拡大している」(神奈川県水源環境保全課森林保全グループ)

 トトロの森がある埼玉県でも拡大に歯止めがかかっていない。

「初めてナラ枯れが確認されたのは19年、新座市と所沢市でした。それが22年9月現在で26市町に広がっています。対策は行っていますが、拡大のスピードはそれより速い。ナラ枯れの繁殖力はそれほど強いのです」(埼玉県森づくり課)

 被害は単に貴重な森林資源が失われてしまうだけではない。樹木が枯死してしまうことで落枝や倒木が起きると、人身被害の恐れがあるばかりでなく、家屋や道路、電線などのインフラが破壊されてしまう。地域によっては景観の悪化も深刻だ。

さいたま市の春里自然の森でナラ枯れした木の幹。害虫が侵入すると木の粉が落ちてわかる(鈴木裕也撮影)
さいたま市の春里自然の森でナラ枯れした木の幹。害虫が侵入すると木の粉が落ちてわかる(鈴木裕也撮影)

 「倒木などによる被害を抑えるには、枯死した木を伐採する必要があるのですが、被害が広がるスピードが速すぎるため、マンパワー的にも予算的にも、すべてを伐採することはできません。現在は、山奥の被害木よりも道路沿いなど、人家に近い部分を優先的に対処しています」(神奈川県森林保全グループ)

「伐採のための資金は寄付や募金で賄っていますが、すべての木を伐採はできませんので、近隣への被害が発生しうる危険な木のみへの対策しかできていないのが現状です。伐採以外にも、クリアファイルを用いたトラップでカシナガキクイムシを捕虫するなどして木を保護しています」(トトロのふるさと基金) 

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毒キノコにクマ…厄介な副産物