自ら作った仕組みに則って走っていく生活の場合、若い頃に抱いていた夢や欲望、自意識など、省略しなくちゃいけないものが生まれてくる。省略しきった先にあるのが、映画の中で演じた永久部長であると、マキタさんは考えている。

「過去に何か目指した夢や目標があっても、大人になってそれを諦めてからは、今の生活のルーティンや毎日のルール、ループする日常を受け入れてしまう。その象徴が永久部長だと思います。部長は、タイムループというイレギュラーなことが起こっている事実を、なかなか受け止められないんだけど、それは部長が、“おじさん”っていう保守的な生き物だからこそ。夢や挫折、挫折する可能性のあるチャレンジに全部ふたをして、今の安心安全安定を手に入れている。そうやって小義名分で生きてる部長がいる一方で、若手たちは自分の利益や利害のために、タイムループした日常からなんとか抜け出そうとします。ある意味、社会そのものを描いているような感じですね。登場人物の一人ひとりが、人間的で愛すべきキャラクターたちだと思います」

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2022年10月28日号より抜粋