シンプルプランで35万円(税別)。7日間が目安のセレモニープランだと85万円(同)。他社と比べそれほど価格は違わない。

 しかし7日ともなれば、さすがに「長い」「間延びするのでは」と問い返してみた。馬場さんも「そうなんです」とうなずく。馬場さんは「故人と過ごしながら、何もすることがなくなってくる日常が大事なんです」。家から送りだす「最期の日」をどのようなものにするのか。「故人としっかり向き合い、ゆったりと考えていくことが癒やしにもなっていく」という。

 棺に孫たちが色とりどりのクレヨンで言葉や絵を描いていくのもいい。最後の晩餐は故人が好きだったものを家族でこしらえたり取り寄せたりして、昔話に花を咲かせるのもありだろう。

「ペットのいるご家庭でよかったのは、一緒にお別れができたことですね。入院中に会えなかったりして、ホールの葬儀だと家族のような存在ながらお別れができないことが多いですから」

 馬場さんが心動いた葬儀の例と話してくれたのは、ドライアイスの交換で訪れたときに、故人を寝かせていたベッドの布団の上で愛犬が眠っていた。

「私もなぜ、お葬式をするのだろうかと考えてきました。葬儀社にぜんぶを任せてしまうのではなく、自分たちで見送ったという充足感が大事なんだと思うようになり、なるべく日常のままにお見送りすることをテーマにするようになりました」

 拠点は鎌倉だが、関東近県のみならず名古屋からの依頼にも応じている。

「確実に『自宅葬』の需要は増えてきていると思います。うちと直接のつながりはないですが、全国各地で『○○自宅葬儀社』を掲げる葬儀社も増えているんですよね」

 馬場さんは葬儀の仕事をする前に写真を学んでいたこともあり、葬儀の際に家族が集まった写真を撮影させてもらうことが多い。一部を見せてもらったが「おじいちゃんの耳もとで語りかけるひ孫たち」。記念の集合写真にしても、にぎやかな声が聞こえてきそうなくらいの笑みを見せたものが多かった。

(文中カタカナは仮名)

週刊朝日  2022年10月14・21日合併号