史上最年少でプロ棋士になった藤田怜央さん
史上最年少でプロ棋士になった藤田怜央さん

 プロ野球の世界ではヤクルト村上宗隆選手(22)が次々とホームランの最年少記録を打ち立て、日本中に明るいニュースを提供している。だが他のジャンルには、もっと年少の記録保持者がたくさん。「若き天才」たちの秘めたる可能性は、村上選手にも負けない、明るい話題だ。

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 日本の囲碁界が沸いている。中学生でプロになり、あっという間に五冠を手にした将棋藤井聡太竜王よりはるかに若い9歳4カ月で、世界最年少のプロ棋士になった天才少年が登場したからだ。

 大阪の小学3年生、身長130センチの藤田怜央(れお)さんだ。

 8月17日にあったプロ入り会見で「目標は世界一」と話した怜央さんは、椅子に座布団を3枚重ねて座高を上げないとカメラに映らないほど、見た目は“子供”そのもの。しかし多くのトップ棋士が認め、才能ある子供を抜擢する「英才特別採用規定」でプロ棋士になった。

 これまでの世界最年少プロ記録は韓国の曹薫鉉(チョフンヒョン)九段と中国の常昊(チャンハオ)九段で、いずれも9歳7カ月。ともに世界戦で優勝経験のある“世界一棋士”だ。このところ世界戦で冴えない日本の囲碁界が期待するのは当然だろう。

 両親と3歳年上の兄との4人家族の次男。きっかけは4歳のころ夢中になったオセロだった。対戦相手を求めて父親がオセロ教室を探したが見つけられず、「見た目がオセロに似ている囲碁はどうか」と近所の碁会所に連れていくと、夢中になった。

 入門10カ月でアマ初段、幼稚園年長組で大阪府の囲碁大会、小学生低学年の部で優勝。小1で日本棋院関西総本部の院生(プロ候補生)に。昨年は中高生の院生を相手に総合成績で2位となり、英才採用の審査が行われることになった。

 東京大学卒業後に銀行マンを経てプロ棋士になった石倉昇九段は、怜央さんを「世界でトップになれる日本の囲碁界期待の星」と言う。

「聞くところによると、中堅どころのプロ棋士とすでに対等に打つ力があると言います。院生として仲間たちと切磋琢磨(せっさたくま)するだけではなく、もっと強い棋士を相手に負けて悔し泣きするような体験を経て、さらに強くなってほしいという才能なので、英才採用でプロにしたのでしょう」

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