「おんな太閤記」の直筆脚本
「おんな太閤記」の直筆脚本

●共通点(2)橋田壽賀子脚本ならではの「長台詞」

 「長台詞」で有名だった橋田脚本。橋田さんは生前、台詞が長い理由を、「主婦は忙しいから家事をしながらでないとテレビが見られない。台詞で場面が伝われば、画面を見なくても内容がわかるでしょ」と説明していました。「おんな太閤記」でも同じです。一人一人の台詞がやたらと長いのです。

 その白眉が第14回「信長の手紙」でした。

 苦労もいとわず尽くしてきた夫・秀吉が、知らないうちに女を作り、しかも子までなしていた事を知って落ち込むねね。夫の上司・信長(演・藤岡弘)のところへ築城のお祝いに出向いた際、つい愚痴を口にします。すると後日、信長からねねを励まし、秀吉にお灸をすえる手紙が届いて……という史実に基づいた感動的な筋立てです。

 クライマックスで、橋田さんが「信長の手紙」をどう説明したか。なんと手紙を一言一句たがわずに秀吉に読み上げさせるのです。それも秀吉の注釈、考え付きで。信長の手紙の内容から、信長が「秀吉夫婦」を贔屓にしていたこと、ねねに一目置いていたことが、よ~くわかります。

  共通点(3)「収まるところに収まる」展開

「渡鬼」では、毎回、少々辟易するほど「こんなひどい話があるのか?」というぐらいトラブルが起こりました。小姑が働き者の嫁を追い出そうとする、夫が失踪しても健気に待っていた息子の嫁が、勤務先の社長にだまされて不倫する……などなど。しかし最終回には、悪役の小姑は反省し、不倫していた嫁も男性に頼らずに生きる道を見つけるなど、収まるところに収まります。つまりきっちり「回収」するわけです。

「おんな太閤記」も同様です。

 毎回、主人公夫婦のねね&秀吉が信長に「殿(しんがり)を勤めろ」だの「蟄居しろ」だの、無理難題な命令をされてピンチに陥るのですが、必ず秀吉の才覚と、ねねの機転で克服するのです。

 その「回収力」が如実に表れていたのが、秀吉の側室・千種(ちぐさ)の描き方です。演じるは「渡鬼」のトラブルメーカーで、五月をこれでもかと苛め抜いていた久子こと沢田雅美。秀吉の子を連れて押しかけてきた千種を追い返そうとする母・なかに「私は秀吉殿の子供を産んだんじゃ。お前にどうこう言われる覚えはない」と憎々し気に言い返し、正室のねねに対しても常に反抗的です。誰にでも分け隔てなく優しいねねも、つい信長に「同じ屋根の下に夫の側室がいるのは地獄だ」と愚痴るほどです。しかし子供が病気で亡くなると、秀吉に城を追い出されることに。千種も当初は「出ていくものか」と居座っていましたが、ついに観念。最後はこれまでのねねに対する非礼を詫び、子供をなくして孤独になった自分を心配してくれたねねに、「御方様(ねね)の温情、忘れません」と言って去っていくのです。

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