ありし日の橋田壽賀子さん(撮影・加藤夏子)
ありし日の橋田壽賀子さん(撮影・加藤夏子)

「渡る世間は鬼ばかり」(以下、渡鬼)、「おしん」の脚本家・橋田壽賀子さんが亡くなって早1年。「渡鬼」の再放送もなく、橋田ファンにとっては少々物足りない日々が続いているのではないでしょうか。そんな方々におススメしたいのが、現在BSプレミアムで再放送中の「おんな太閤記」。1981年に放映された橋田脚本の大河ドラマで、豊臣秀吉(西田敏行)の立身出世物語を、正室・ねね(佐久間良子)の視点から描いています。

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 この「おんな太閤記」、「渡鬼」がスタートする約10年前に作られたドラマですが、共通点が非常に多いのです。

●共通点(1)「渡鬼」と重なるキャストが多数出演

 まず出演者です。以下、両作品に出演している俳優さんを、俳優名→「渡鬼」での役名→「おんな太閤記」での役名――で挙げてみます。

 泉ピン子→五月→秀吉の妹・あさひ

 長山藍子→弥生→秀吉の姉・とも

 赤木春恵→五月の姑・キミ→秀吉の母・なか(大政所)

 前田吟→弥生の夫・良→秀吉の部下・蜂須賀小六

 角野卓造→五月の夫・勇→細川藤孝

 東てる美→五月の小姑・邦子→秀吉の密偵・みつ

 沢田雅美→五月の小姑・久子→秀吉の側室・千種

 こんなに重なっているのです。「おんな太閤記」で、泉ピン子演じるあさひが、愚痴を言って赤木春恵演じる母・なかに窘(たしな)められる場面など、戦国時代の座敷が「幸楽」の厨房に見えてきます。

 橋田壽賀子さんは生前、香取慎吾さんとの対談(週刊朝日2018年1月19日号)で「自分は普通の人しか書けない」と語っています。

〈橋田 香取さんは個性が強くて、私が書くホームドラマにははまらない人です。美男子すぎるし。この方が生きるようなドラマは1オクターブ高いものを書かないといけない。

 香取 1オクターブですか。

 橋田 そう。香取さんとドラマの仕事をしたいけれど私には書けない〉

 それ故に泉ピン子を代表とする「普通を演じられる」役者さんを好んで使ったのだと推察できます。

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橋田壽賀子脚本ならではの「長台詞」