※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 今や共働きが多数となった子育て世代にとって、大きな助けとなるのが祖父母の「孫育て」。ところが世代間ギャップに始まり、子の配偶者の実家との張り合い、長生き時代こそ生まれる負担など、イマドキの孫育ては楽しさばかりではない。葛藤の声を追った。

【図表】子育ての今と昔の違いはこちら

*  *  *

「今は大変だけど、どちらも私の“役割”だから仕方ない」

 田村芳子さん(仮名・66歳)は今、孫育てと介護がダブルでのしかかる日々を過ごしている。子どもは娘2人。近くに住む次女に昨年、2人目の子どもが生まれた。上の子どもは3歳で、まだまだ手がかかる時期。娘の夫は仕事が忙しく不在がちで、平日はほとんど娘のワンオペだ。少しでも娘を助けてやりたいと、「いつでも頼ってね」という姿勢を貫いてきた。

 ところが昨年末、義母(87)が骨折して入院。無事に回復して何とか歩けるようになったが、少し歩けば休憩が必要で、買い物も含めて、あまり外に出たがらなくなった。さらに退院から少し経つと、認知症の症状があらわれ始めた。義母が「施設には絶対に入りたくない」と固く心に決めているのは知っている。最期まで自宅で過ごすつもりだということも聞かされていた。それゆえに、「芳子さん、よろしくお願いしますね」という義母の言葉は重く響いた。妻である自分に、介護の“役割”が当たり前のように期待されていた。

 かくして、孫育てと介護を手探りで両立する日々が始まった。娘は1年の育休を経て、今年仕事に復帰。時短勤務ではあるものの、保育園への迎えが間に合わず、芳子さんにヘルプの電話がかかってくることもしばしばだ。娘が仕事から帰宅してから、子ども2人を寝かしつけるまでの、怒濤のワンオペを少しでも手伝ってやろうと、家事や孫育てを手伝いに行く夜も少なくない。まだ目が離せない幼い子どもを一人で見ながら、夕食の準備をして食べさせ、何とか2人をお風呂に入れて寝かせる生活は、自分の食事もままならないほど大変なことを娘から聞いているからだ。

著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら
次のページ