週刊朝日 2022年7月29日号より
週刊朝日 2022年7月29日号より

 ただし、後藤弁護士は「卒婚には意外な落とし穴もある」と注意を促す。

「ひとつは別々に暮らした場合に増えてしまう生活費の問題。また、婚姻関係は続くので、新しいパートナーができた場合には、仮に夫婦間で“恋愛自由”の覚書を交わしていても不貞行為とみなされる可能性があることにも注意が必要です。お試しで卒婚したつもりが、望まなかった離婚に発展してしまう場合もあります」

 卒婚は妻側から提案することが少なくない。結婚生活で束縛されてきたと感じているのは、女性のほうが多いということかもしれない。老後を見据えて「自分の人生を取り戻したかった」というのはKさん(53)だ。

 33歳のとき、10歳年上の上司と結婚した。彼は再婚で、当時11歳、8歳の子をひとりで育てていた。彼女は初婚だったため親に反対されたが、付き合っているうちに子供たちに情が移ったKさんは、意を決して結婚した。

「上の男の子は変わらずに懐いてくれたんですが、下の娘が反発しましたね。お父さんをとられるような気持ちだったのかもしれません」

 仕事を辞め、必死で子供たちと向き合う日々。いつしか娘も「お母さん」と呼んでくれるようになり、誰よりも味方となってくれた。

「夫は子育ても家事も私に丸投げでした。前妻と死に別れて、幼い子を一人で育ててきて私と結婚したから、ホッとしてしまったのかもしれません。私自身も結婚して3年後には就職し、子育てと仕事に全力で突っ走ってきた気がします」

 子供が小さいうちは、夫とも意思の疎通はできていた。だが彼女が40代のころには、夫の浮気に泣かされたことも何度かある。「おまえは女としてつまらないんだよな」と暴言を吐かれたことが、今も傷となって残っている。いつかはひとりになりたいと思うきっかけだった。

 仕事と子育てに邁進(まいしん)した17年間を経て50歳になったころ、卒婚を提案。子供たちも大賛成で、「そろそろお母さんを解放してあげたら」と進言してくれた。夫はどこか彼女を見下しているようで、「ひとりでやれるものならやってみろ」という感じで賛成したという。

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