森崎ウィンさん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
森崎ウィンさん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

 3年連続で、ミュージカル大作に出演する森崎ウィンさん。20年前、ミャンマーから、日本語も話せないまま来日。中学生時代のスカウトから10年以上経った25歳のときに、スティーブン・スピルバーグ監督の「レディ・プレイヤー1」に抜擢。歌に踊りに芝居に、今や存分に才能を発揮しているが、卓越しているのは、志の高さだ。

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 2019年には、映画「蜜蜂と遠雷」に出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞にも輝いた。20年には、ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season2のトニー役で、本格的にミュージカルデビューを果たす。「ウエスト・サイド~」は、20年2月末に、新型コロナウイルス感染拡大のため後半の公演が中止になってしまったが、ウィンさんは、21年にも、ドラァグクイーンを演じた「ジェイミー」でミュージカルの舞台に立った。そして今夏、トニー賞受賞のブロードウェイミュージカル「ピピン」では、主演のピピンを演じる。

「実は、『ウエスト・サイド・ストーリー』をやるまで、僕はほとんどミュージカルを観たことがなかったんです。『少しは何か観て勉強しなければ』と思っていた矢先に、たまたま家でテレビをつけていたら、城田優さんが主演する『ピピン』のCMが流れていて……。『これ、おもしろそう!』と思って、自分でチケット買って、一人で観に行きました。誰かに勧められてとか、知り合いが出ているからとかじゃない理由で観に行ったのは、初めてだったんじゃないかな。しかも、すごく感動して、感想を速攻でツイッターに上げたぐらい(笑)。まさかそんな舞台に、自分が出演することになろうとは」

■子供たちの未来に貢献したい

 ずっと映像の仕事に関わってきたので、まだ「ミュージカル俳優」と呼ばれることには違和感を覚えるという。

「ミュージカルをやると、音楽の力ってすごいなって改めて感じます。映像でも、ロマンチックなシーンには、ロマンチックな曲が流れるじゃないですか。ああいう演出としての音楽の力もすごく感じますけど、ミュージカルの場合は、歌うことで、自分が到達できなかった感情に到達できるというのがあって……。僕のまだ数少ない経験の中ですが、『歌があるから、俺はこの気持ちになれるんだ』っていう発見は大きかった。これからもミュージカルの経験は積んでいきたいですけど、『ミュージカル俳優』になると、僕じゃなくなっちゃう気がするんですよね。映像も好きだし、音楽も好きだし。文化も、国境も、ジャンルも、いろんなボーダーを超えて、一人でも多くの人を楽しませることのできるエンターテイナーとして、自分の武器を使えるだけ使いたいっていうのはすごくあります。そのためには、できるだけ、いろんな顔を持っていたい」

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