ライター・永江朗さんの「ベスト・レコメンド」。今回は、『長期腐敗体制』(白井 聡 角川新書、1012円・税込み)を取り上げる。

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 もうすぐ参議院選挙の投票日。安倍、菅、岸田と続いた自公政権がやったこととやらなかったことをよーく考えて投票所に行こう。白井聡の『長期腐敗体制』は、これまでのおさらいに最適な本である。

 民主党に代わって自公が政権に返り咲いてから今日までを、白井は「二〇一二年体制」と呼ぶ。この10年、基本的な枠組みは変わっていない。

 良い政治と悪い政治がある、悪い政治の悪徳は、不正、無能、腐敗である、と白井はいう。そのうえで、二〇一二年体制の経済政策と外交・安全保障政策を総括する。

 白井について、安倍や菅の悪口ばかり言う若手論客という程度にしか見ていない人がいるかもしれない。だが本書で白井は政治学者らしく、戦後政治の流れのなかでこの体制はどうだったのかを冷静に評価し、コンパクトに解説する。すると見えてくるのは、経済面でも外交・安全保障面でも、安倍晋三およびその信者がいうほどには成果を上げていないという現実である。不正、無能、腐敗の三拍子揃った体制なのだ。

 では、なぜこのダメな体制が続いているのか。第五章に衝撃的な研究が紹介されている。米ダートマス大学の堀内勇作教授による、日本の有権者が政党の政策をどう評価しているのかを調べたもの。政党名を隠して政策だけの評価を問うと、自民党の政策は人気がない。ところが、でたらめにつくった政策パッケージを自民党の政策だとして提示すると支持が高い。つまり有権者は政策で自民党を選んでいるのではなく、それが自民党だから選んでいるのだ。

 まずは政策をよーく読んで投票に行こう。

週刊朝日  2022年7月15日号