創刊100周年を記念して本誌が表紙を集めて作製したポスター。発売されたころの記憶を呼び起こすタイムマシンのようだ
創刊100周年を記念して本誌が表紙を集めて作製したポスター。発売されたころの記憶を呼び起こすタイムマシンのようだ
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 今年2月に100周年を迎えた本誌の「全表紙デジタル化」プロジェクトが完了した。増刊号なども含めすべての表紙をスキャンして、デジタルデータとして保存した。

 35万部を発行した1922(大正11)年の創刊号の表紙は「ジヨフル元帥の朝日新聞社来訪」の写真。元帥は第1次世界大戦のフランス軍総司令官だ。皇族が取り上げられることが多かった表紙は、昭和に入ると当時人気の女優ら女性の写真や絵が増え始める。

 39(昭和14)年9月にドイツとソ連が相次いでポーランドに侵攻して、第2次世界大戦が勃発。翌40(昭和15)年春から表紙の雰囲気が少しずつ変わっていく。

 4月1日号、近衛文麿の写真の表紙が変わり目だった。9月の日独伊三国同盟の調印に先立つ8月18日号はヒトラーの肖像画が掲載された。

 41(昭和16)年、太平洋戦争が始まる。兵士や戦闘機などの絵が増え、表紙も戦時体制の影響を色濃く映し出す。

 45(昭和20)年8月15日、敗戦。戦後の復興に合わせて表紙も徐々に活気を取り戻す。47(昭和22)年9月21日号から1年間、新しいファッションを身につけた女性の絵が続く。

 扇谷正造が編集長を務めた51(昭和26)~58(昭和33)年、本誌は飛躍的に部数を伸ばす。表紙にも力を入れた扇谷は「個性的な美人画」を軸に一流の画家の絵を表紙に採用した。153万9500部を記録した58年1月5日新年増大号(特別定価50円)の表紙は洋画家の梅原龍三郎が武骨なタッチで描いた犬の絵「チビ」だった。

 昔の雑誌は劣化が進んでいるため、朝日新聞出版と朝日新聞社が共同でプロジェクトを進めた。

 100年分の表紙スキャンの実務を担当した朝日新聞東京本社ニッポン写真遺産事務局の寺腰忍さんは「表紙の写真は撮り方や題材にチャレンジ精神があふれています」と話し、こう続ける。

「表紙は時代の空気を映すと改めて実感しました。戦争が始まるときは様子がおかしくなるのが肌感覚でわかります。1945年に20銭だった定価が47年末には8円まで上がります。どれだけ激動の時代だったか想像がふくらみました。表紙を連続で見ていくことで新たな価値が生まれるような気がします」

(本誌・堀井正明)

週刊朝日  2022年7月15日号