千葉工業大学のキャンパス
千葉工業大学のキャンパス

 広告掲載後、SNS上には「インパクトのある内容」「新聞をめくる手が止まった」といった感想が多数投稿され、大学には感想の電話が相次いだ。多くは好意的に受け止める内容だったが、一部には21年、軍事技術に応用可能な基礎研究を対象とした防衛装備庁の研究助成制度に同大学の研究課題が採択されていることを疑問視するものもあった。

「採択された研究が軍事研究に使われるかどうかについては、応募時、防衛省にも確認を取りました。研究は、宇宙ごみを出さないロケット燃料の開発を目指すもの。研究の論文も公開されるということもあり、他省庁と同様な科学技術研究支援と判断し、応募しています」(日下部さん)

 批判を「リスク」と捉え、思い切った試みを避ける大学もある中、あえて挑戦的なメッセージを打ち出し続ける理由について、日下部さんはこう話す。

「千葉工業大学はいわゆる『有名大学』ではありません。だからこそ、まずは目に留めてもらうことが大切だと思っています。入試制度は毎年何かしら変えていますし、研究成果を発信する上でも、大学の名前をいかに効果的に出せるか、常に意識しています。今、国内では工業分野をはじめ理工系の人材不足が指摘されています。うちの大学への注目を通じて、工業系大学全体を盛り上げたい。それが一番の目標です」

 18歳人口の減少や、定員割れ大学の増加など、私立大学について伝えるニュースは明るいものばかりではない。そんな中でも「荒波にさらされた方が、いいアイデアは浮かびやすくなる」と日下部さんは言う。困難な状況を前向きに受け止め、チャンスへと変えていく精神に、生き残る大学のヒントを見た気がした。(本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日オンライン限定記事