岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office

 動物写真家岩合光昭さんが見つけた“いい(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、キプロス・リマソルの「ミニャクルショット」です。

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 夕暮れ時、アポロン神殿の遺跡の上に立派な体躯の猫がいた。ティグリ。ギリシャ語で虎という名のオス。お告げをくれそうな、凜々しい顔つきをしていた。

撮影/岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
撮影/岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office

 キプロスの夕陽は、まるで月のよう。空気が澄んでいるせいか、赤々と燃えるインドの太陽とはちがい、辺りが暗くなったかと思うと薄黄の光をたたえてすうっと沈んでいく。

 この控えめで美しい夕陽に、猫のシルエットを映したい。地平線に逃げていく太陽を追いかけ、シャッターを切る。神秘の猫が授けてくれた、至上の一枚。

週刊朝日  2022年6月3日号

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岩合光昭

岩合光昭

岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年生まれ。動物写真家。1980年雑誌「アサヒグラフ」での連載「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。1982~84年アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在。このとき撮影した写真集『おきて』が全世界でベストセラーに。1986年ライオンの親子の写真が、米「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙に。94年、スノーモンキーの写真で、日本人として唯一、2度目の表紙を飾る。2012年NHK BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」のオンエア開始。著書に『日本のねこみち』『世界のねこみち』『岩合光昭写真集 猫にまた旅』『ふるさとのねこ』『ネコを撮る』『ネコへの恋文』など多数。初監督作品となる映画「ねことじいちゃん」のBlu-rayとDVDが発売中。

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