「魔太郎が“倍返し”する姿に胸がスカッとしましたね。作品内にオカルトグッズを売っているお店が出てくるのですが、店主が『オペラの怪人』のマスクをつけているんです。そういった所にもホラー好きの私の心はくすぐられて。幅広い知識をお持ちの方でしたので、(A)先生もホラーマニアだったのかなと思います」

「魔太郎がくる!!」は、伊藤さんの作品に登場するキャラクター「双一」にも影響を与えている。

「彼の髪形は、魔太郎から着想を得ています。『陰気な顔にするにはどうしたらいいか』と考えた時に、濡れて波打ったような魔太郎の前髪が浮かんできたんです。それだけ魔太郎のインパクトは強かった」

 トキワ荘の多くの漫画家はSFやギャグ漫画が主流だったが、藤子さんは“怪奇色”が強いイメージだという。

「『笑ゥせぇるすまん』には、先生のブラックユーモアが表れているのではないでしょうか。私にとって先生は、トキワ荘の漫画家の中でもとりわけ思い入れが強い方でした。本当に残念です」

(本誌・唐澤俊介)

週刊朝日  2022年4月22日号

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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