「学校として育成したい生徒像が明確です。東大や京大だけではなく、海外の大学にも合格者を輩出しています。奈良のほかに札幌や仙台、岡山、広島、福岡など入試会場を地方にも設けており、全国から優秀な生徒が集まっています」(同)

 京大は、19年から21年まで府立の北野(大阪)が首位だった。

(週刊朝日2022年3月25日号より)
(週刊朝日2022年3月25日号より)

「2年進級時に『文科』と『理科』という学科に分かれ、『文科』は人文や社会、『理科』は自然科学などに関する探究学習の時間を多く設けています。内容に魅力を感じ、府内から優秀な生徒が集まる好循環も生まれています」(同)

 過去50年で合格者を多く出した高校を、国公立と私立の種別に見てみると、1971年時点では東大、京大とも公立校が優勢だったが、21年は東大で76%、京大で50%を私立が占めた。石原さんが説明する。

「公立校の場合、一部の県や進学重点校を除き、特定の大学を目指した対応や、私立中高一貫校のような先取り学習は難しい。一方、私立は学校の判断で東大特進コースなどを設けることができ、公立に比べて柔軟な対応を取りやすい」

 こうした特徴も踏まえつつ、過去10年間で東大合格者数が増えた公立・私立それぞれの上位10校を見てみよう。

(週刊朝日2022年3月25日号より)
(週刊朝日2022年3月25日号より)

 公立校で東大合格者数を最も伸ばしたのは、横浜翠嵐(神奈川、県立)で41人増。日比谷(東京、都立)が34人増で続いた。高志(福井、県立)や明和(愛知、県立)など地方の高校もランク入りしている。

「関西や東海といった都市部では、地元の難関大以外の大学を意識した対策は取りにくい。地方の場合、明治期に作られた第一中学(旧制一中)がトップ校として残っていることが多く、旧制一中時代から中央に人材を輩出してきた経緯に支えられている側面が強い」と石原さんは分析する。

 私立では早稲田(東京)が19人増やした。早大の系列校として知られるが、21年、同大に内部推薦で進学したのは卒業生299人の約半数にあたる159人。系列校の場合、エスカレーター式に内部進学ができる点がメリットのひとつと考えられてきたが、石原さんによれば、近年は傾向が変わってきていると言う。

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