市川染五郎 [撮影/舞山秀一、ヘアメイク/AKANE、アートディレクション/福島源之助+FROG KING STUDIO]
市川染五郎 [撮影/舞山秀一、ヘアメイク/AKANE、アートディレクション/福島源之助+FROG KING STUDIO]

 でもゆくゆくは、型を身につけたうえでそれを破るようなこともしたいです。高麗屋は新しいことに挑戦してきた家なので、自分も代々の人たちとはちがうことをしたいなっていうのは常に思っています。

 今の時代に合う歌舞伎の形はなんなんだろうって模索していきたい。それに、今だけじゃなくてちょっと先の未来を予測して、先取りすることもできたらいいですよね。

 たとえば、今は歌舞伎を動画で配信することが多くなっているので、映像作品とか。舞台だと伝えたいことを直接伝えられるし、お客様の反応を見られるので、自分としては舞台が一番好きです。でも若い方に知っていただく機会としては映像も使えたらいいなと。

 日常生活では、見るものすべて、無意識に歌舞伎につなげています。映画を見て「これを歌舞伎にしたらどうなるかな」って考えたり、かっこいい響きの言葉を見つけたら「何かのタイトルに使えそうだな」って携帯にメモしたり。そういう頭になっちゃっています。

──現在高校2年生。仕事と学業の両立は大変?

 学業ができれば苦労はないと思うんですけど、できないので苦労しています(笑)。特に数学は中学生のころから苦手です。勉強しなきゃと焦ってはいるんですけど、まだまだ勉強の面白さにたどりつけていないのかもしれません。授業中は真面目に聞いているのですが……。

──歌舞伎以外に、挑戦してみたい仕事は?

 具体的な目標はないですね。いろんなことをやっていきたいですし、歌舞伎以外のお仕事で興味を持ってくださった方も、それをきっかけに歌舞伎を見に来てくださったらうれしいです。

 どんなお仕事でも、「この経験が自分のお芝居に生かせればいいな」と思って臨んでいるんです。自分が歌舞伎俳優であることは、常に忘れないようにしています。

(構成/本誌・大谷百合絵)

市川染五郎(いちかわ・そめごろう)/2005年、東京都生まれ。松本白鸚を祖父に、松本幸四郎を父に持つ。18年に八代目市川染五郎を襲名。昨年はアニメーション映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」で主人公の声優を務めた。放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に木曽義高役で出演。

週刊朝日  2022年3月4日号