祖父は松本白鸚、父は松本幸四郎、叔母は松たか子。華麗なる一族に生まれ、次世代の歌舞伎スターを約束された市川染五郎に、各界から熱視線が注がれている。声優やモデルなど活躍の幅を広げ、放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では悲劇の美少年、木曽義高を演じる。大河での学びや歌舞伎俳優としてのビジョンについて、16歳とは思えぬ思慮深さで言葉を紡いだ。
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──初の大河出演ですが、撮影で感じたことは?
映像の作品は、ノンストップで進んでいく舞台と違ってシーンごとに撮影しますし、順撮りもできない。台本も全話一気にもらえるわけではないので、義高がどんな人でどう変化していくのか、最初は全然つかめませんでした。
回ごとに監督が違ったりもするんですけど、指示をいただいたり、気持ちの流れを整理したりするなかで、少しずつ人物像ができあがっていきました。
義高は、尊敬する父親である(木曽)義仲のために生きている人。すごくまっすぐで、「父上のためなら」って迷いなく敵の人質になる。そして、源頼朝の娘である大姫のいいなずけになるわけです。自分だったらいやですね(笑)。
大河で描かれている義高は大人っぽいんですけど、史実で考えると11歳くらいなんです。父親と離れ離れのまま12歳で亡くなるまで、いろいろな思いを抱えて、それを周りに見せようとしなかった。すごいと思います。
でも、ふっと素に戻って真顔になる、怖さを感じさせる場面もあります。監督からは「能面のような顔で」と言われました。やっぱり人質として大姫と出会っているわけなので、そういう複雑な思いが垣間見えるような役作りを心がけました。
──義高に共感できる部分はありましたか?
大人に囲まれた世界にぽっと送りこまれて、っていうところは自分も同じだなあと思いました。歌舞伎の世界も大人ばかりですから、やはり不安や緊張を感じることも多いです。