25年以上の歴史を持つ作家・林真理子さんの連載「マリコのゲストコレクション」。スタート以来、数々のゲストにご登場いただいてきました。

【写真】岩合さん撮影!枯れ葉をやさしく抱えて立ち上がる猫

 世界的な動物写真家・岩合光昭さんもその一人。岩合さんは40年以上の写真家生活で、各地で多くのネコを撮影してきました。対談では、丹念な観察と深い愛情に裏打ちされた、ネコの自然な表情を引き出す技をたっぷり公開。「スーパーの帰り、よくノラネコに呼び止められる」というマリコさん、その理由とは──。2018年12月28日号掲載

「今週の」(2016年6月~)など

*  *  *

林:岩合さん、ジャマイカから帰ってきたばかりだそうですけど、外国の人は撮影してるとき、「何を撮ってるんだ」って聞きます?

岩合:聞きますね。言うと大体「なんだ、ネコか」って言われます(笑)。それで安心される方もいます。テレビの取材で今まで一回も取材をオーケーしなかったお城があって、その館長さんがネコを飼っていて、「お城じゃなくて、ネコの取材です。許可をお願いします」と言ったらオーケーが出て、そのお城に入っていったこともあります。ネコが人を結びつけるって本当だなと思いますね。

林:世界のネコちゃんって国によって顔が違うんでしょう?

岩合:ネコはネコだと思います。ただ、暮らし方が違うので、のんびりした人が多いところはネコものんびりしてますし、人がせっかちに動くところは、ネコもなんとなく戦々恐々としてるような感じがします。寄り添う形で人に殉じるのがネコなので、人がいないとおそらくネコは暮らしていけないと思います。

*中略*(以下、*)

岩合:顔が傷だらけの雄ネコを撮影対象にしたことがあるんです。「おはよう」と声かけをすると、その傷だらけのネコが振り返って「えっ、俺のこと?」って顔をするんで、「そう、キミのこと」って言うんです。おそらくこの雄ネコは今まで人に声をかけられたことがないんじゃないかと思ったりして、そのあととても協力的になってくれたりするんですよ。やっぱりネコも人を見るんだなと思いますね。

林:へーえ、そこまで意思疎通ができるんですね。

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