ジェンダーや子育てに関する議論が少しずつ進む昨今。当時最年少の議員として国会デビューして以来、注目される鈴木貴子衆議院議員(36)が掲げる目標とは?
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「あ、どうぞー」。事務所に入ると、来客対応中だった本人が気さくに声をかけてくれた。鈴木貴子。政治家・鈴木宗男氏を父に持ち、27歳で当時最年少の議員として国会デビュー。32歳で防衛大臣政務官、35歳で外務副大臣に就任し、数少ない若手女性議員として注目を集めてきた。
「鈴木宗男は、天国と地獄の両方を経験した政治家。その父を近くで見てきた私は、サラブレッドというよりも、農耕馬のような二世議員だと思っています」
カナダの高校に留学中だった2002年、いわゆる「鈴木宗男事件」が勃発。さまざまな疑惑が報道され、同年、宗男氏はあっせん収賄容疑で逮捕された。
「当時、ニュースサイトのトップには連日父の名前が出ていた。中には私が『愛人の子ども』と、事実と違うことを書き立てるものもあった。家族や自分の人生までも否定されるような感覚でした」
大学卒業後はNHKでディレクターをしていたが、12年、公民権停止中の宗男氏に代わり衆院選に出馬するため退職。結果は落選だったが、翌年、次点で繰り上げ当選した。
ジェンダーや子育てに関わる政策に力を入れており、直近では「こども家庭庁」の創設にも関わった。
「これまで、政策・意思決定機関に女性が少なかった。すべての女性の声を代弁できるわけではないですが、時代に合わせた前向きな議論や取り組みを行っていきたいです」
現在、関心を寄せているのが権利や人間関係など、多様な角度から性を学ぶ「包括的性教育」だ。
「性を語る上では感情論でなくエビデンスにもとづく議論が大切。今年はデータをもとにした性教育の学習会を立ち上げたい」
私生活では2児の母。以前は仕事を自宅に持ち帰ることも多かったが、出産後は「家では仕事をしない」と決め、家族との時間を大切にしている。
最近は街頭演説中に同年代の女性から声をかけられることも多く、「ムネオの娘」というイメージを超え「鈴木貴子」個人への期待が高まっていることを実感するという。
「父は『俺がやる』というタイプの政治家で、良くも悪くも古典的。一方、私は有権者と一緒に街の未来を考えるというスタンス。『成功体験』を特に若い世代に共有してもらい、政治をより身近に感じてほしいと思っています」
(本誌・松岡瑛理)
※週刊朝日 2022年1月28日号