ワイズマン監督が元気に仕事を続けられる理由は何なのか。

「個人的には肉体的に健康であること、面白い仕事をすること。その組み合わせで90歳を過ぎても仕事ができていると思います」

 だから「毎朝エクササイズ用の室内自転車を40分こぐ」ことを欠かさない。また、ドキュメンタリー映画を撮ること、それ自体が面白い仕事だ。

「ドキュメンタリーを撮ることは、私にとって全てが新しい。次に何が起こるかわからない冒険です。今回なら警察の車に乗ったり、消防車に乗ったり。あるいは社会福祉のミーティングに出たり。私の普通の生活では起こりえないことなので、それがまた面白い。私の人生の目標は、なるべくたくさんの映画を作り続けることです」

 91歳のクリント・イーストウッドも撮り続けている。

 14日から全国公開される主演作「クライ・マッチョ」は、監督デビュー50周年記念作。落ちぶれた老カウボーイと親の愛を知らない少年が、追っ手から逃げつつメキシコの地を旅するロードムービーだ。

 イーストウッドは「許されざる者」(92年)以来30年ぶりに馬にまたがり、手綱さばきを披露。さらに、少年とともに逃亡の身となった、イーストウッド演じるマイクと、自分たちを助けてくれる酒場の女主人との淡いロマンスも描かれる。

 劇中、マイクが「昔の俺はすごかった」と呟(つぶや)くシーンがある。だが、90歳という年齢を超越してアクションやロマンスを見せるイーストウッドは「今もすごい」の一言だ。アラ卒になっても、イーストウッドの中のカウボーイ魂は健在なのだ。

「クライ・マッチョ」が米国で公開された昨年9月、米国のサイト「Parade」のインタビューで、イーストウッドは「(引退の)計画はない」と語った。

「私は常に次に何をするかわかっている。本や劇からアイデアをもらったり練り上げたりするのが今も大好きだ。私は映画を愛しているし、作ることも楽しんでいる」

 元気であり続けるためには、楽しみを突き詰めること──。そこに国境はないはずだ。(坂口さゆり)

週刊朝日  2022年1月21日号