主演も務める「クライ・マッチョ」が14日公開されるイーストウッド監督=(c)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
主演も務める「クライ・マッチョ」が14日公開されるイーストウッド監督=(c)2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 日本では「人生100年時代」といわれているが、海外ではどうか? 90歳前後で現役を貫く二人の監督に注目した。

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 米国映画界でもアラウンド卒寿が活躍している。

 まずは昨年11月、ドキュメンタリー映画「ボストン市庁舎」が公開された「アメリカ映画界の生ける伝説」と称されるフレデリック・ワイズマン監督(92)。

最新作「ボストン市庁舎」が全国順次公開中のワイズマン監督=Photo by Wolfgang Wesener
最新作「ボストン市庁舎」が全国順次公開中のワイズマン監督=Photo by Wolfgang Wesener

 公開前にオンライン取材の機会を得たが、取材予定日の前日に急きょ、「2日間後ろにずらしてほしい」との連絡が入った。新型コロナウイルスに感染して入院したという。取材は本当にできるのか。当日まで気が気でなかったが、ご本人は何事もなかったかのように「大丈夫です」と答えた。

 ワイズマン監督は1930年1月1日、ユダヤ系移民の弁護士の父と社会活動家の母との間に米国マサチューセッツ州ボストンに生まれた。66年からドキュメンタリー映画を撮り始め、キャリアはすでに55年超。1年半に1本くらいのペースで撮り続けていることが驚異的だ。しかも、直近10年ほどを振り返っても、「パリ・オペラ座のすべて」(2009年)、「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」(14年)、「ニューヨーク公共図書館」(17年)など、どれもが高い評価を受けている。

「初めて映画を撮って以降、学んできた経験の積み重ねが技術的にも改善されていたらいいなと思って毎回撮っています。一番最近学んだことが最新作に表れているのではないかと思います」(ワイズマン監督)

 さらにうまく、という向上心は、とどまるところを知らない。

 題材を一つの組織や施設、地域などに決め、「視点を定めることもなく、十分な知識もなく映画を作り始める」ことがワイズマン流。「なるべくたくさんのイベントを取材することが私の計画だった」と言う。撮影クルーは、ワイズマンが監督と音声を兼ね、カメラマン、機材を運ぶアシスタントの3人。「ボストン市庁舎」では撮影に10週間、編集に7カ月かけた。「入れたいものを全部入れた」だけに274分という長尺になった。

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