イラスト/カトリーヌあやこ
イラスト/カトリーヌあやこ

「すまん、みな死なれてしもうた」と涙をこぼす父に、息子は「戦争だったんじゃ。しょうがねぇ」と、やさしく声をかける。

 いつの間にかラジオから流れてくるエンタツ・アチャコ(演じるのは中川家)の漫才。「タッチならず、セーフセーフ」。温かな灯(あか)りがともる。

 家族みんなと菓子職人と、おはぎを頬張り笑いあう。その幸福に満ちた光景に城田優の静かなナレーションが。「金太が亡くなっているという知らせが入ったのは、その翌朝のことでした」

 それは「ナレ死」というより「夢死」だ。戸をたたく少年の声から、金太も視聴者も夢に迷い込む。死を前にして見る許しと救いの夢の中に。脚本・藤本有紀氏は落語を題材にした朝ドラ「ちりとてちん」で知られているが、この場面はまさに人情落語のようでもあった。「金太の見た最後の夢」という語りの仕掛け、そしてナレーションの鮮やかな「オチ(死)」。

 物語の中、あずきを炊くたびに紡がれる魔法の言葉がある。「おいしゅうなれ、おいしゅうなれ」。

 手間ひまを惜しまず、愛情を注ぐ。ドラマ作りもそれはきっと同じだ。

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

週刊朝日  2022年1月7・14日合併号

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カトリーヌあやこ

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カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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