(週刊朝日2021年12月24日号より)
(週刊朝日2021年12月24日号より)

 ワクチン接種が進む前の今春、札幌市の透析施設では複数のクラスターが発生し、夏の「第5波」では、コロナに感染した人工透析患者がすぐに入院できない事例が相次いだ。こうした中、自宅でできる「腹膜透析」という治療法が注目されている。

【「腹膜透析」の生活パターンの例はこちら】

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 糖尿病や高血圧などが主な引き金となって起こる慢性腎臓病は、成人の8人に1人が罹患していると推計されている。病気が進み、末期腎不全になったとき、腎臓の代わりとなる治療が「人工透析(以下、透析)」だ。

 一般に透析というと、施設に通い、透析器(人工腎臓)を使って血液中から毒素や水分を取り除き、体内に戻す血液透析がイメージされるが、自宅でできる腹膜透析という方法もある。

 腹膜透析は、透析器の代わりに自分の腹膜を使う。腹膜は胃や腸などの臓器を覆い、毛細血管が豊富だ。手術によって腹部を切開し、カテーテルの先を腹腔内に留め置く。そこから透析液を入れると血液中の毒素などが徐々に透析液に移行する。一定時間を経た後、この透析液(排液)を捨て、新たな透析液を入れる。透析液が入ったバッグの交換を自ら行う腹膜透析を「連続携行式」と呼ぶ。

 東京・広尾にある日本赤十字社医療センター腎臓内科の小林竜医師はこう話す。

「連続携行式の場合、当センターでは1日1、2袋(1袋1.5~2リットルが一般的)から始め、腎機能が低下してきたら徐々に増やしていくパターンが多いです。透析液の交換は慣れると歯みがきと同じで、日々の習慣になります。多くの患者さんは『苦にならない』とおっしゃいます」

 連続携行式のほかに、専用の機械を使って眠っている間に透析をするAPD(自動腹膜透析)というやり方もある。バッグの交換は機械が自動で行う。日中の時間を自由に使いたい人に向いている。都内に住む山本和夫さん(仮名・85歳)も昨年5月からAPDで腹膜透析を始めた。毎晩、午後10時半ごろ機械をセットし就寝。朝6時に起きたときには透析は終わっている。

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