松田優作さん
松田優作さん

 11月6日は希代の個性派俳優・松田優作の三十三回忌。「太陽にほえろ!」のジーパン刑事で鮮烈なデビューを果たし、「ブラック・レイン」で米国進出直後、がんで帰らぬ人となった。今も輝く「伝説のスター」の魅力を、妻・美由紀さんに語ってもらった。

【松田美由紀さんの写真はこちら】

*  *  *

 女優、写真家、シャンソン歌手として活躍する松田美由紀さんは、10月6日の誕生日に東京・丸の内のCOTTON CLUBで還暦ライブを開いた。その熱がさめやらない中でインタビューをお願いした。

──最初の出会いは?

 中1ぐらいのとき、すれ違ってるんです。母と下北沢を歩いてたら「松田優作じゃない?」。私は知らなかったので「誰、それ」と言うと、「俳優さんよ」。で、振り返ったら後ろ姿でね。やっぱり、優作は、先に、どっかに行っちゃうんだよな、と思うんです。

──その数年後

「探偵物語」の第1話で、新人女優の私が待ち合わせ場所を間違えて遅刻したんです。《どうしよう、怒られる》と思いながら皆に謝って歩き、優作のところに行って「すみません」と言うと、私が本当に慌ててたからだと思いますが「大丈夫。慌てんな。深呼吸してごらん」と言って、ギュッとハグしてくれたんです(笑)。

 これは、あとで知ったことですが、優作はスタッフにもスキンシップが多い人で、よくハグしてて、いつも本当に下心が感じられないんです。それは私が男の人を信頼する上で、とても大切なことです。だから初めて出会ったときに安心感と包容力を感じ、“運命”みたいなものまで感じたのを覚えています。

──脚本、構成、演出、主演全てをこなした還暦ライブ。テーマは松田美由紀の人生。そこで朗読した詩の一節、「あなたと接吻いたしましょう」を聞いたとき、松田優作さんの顔が浮かんだ

 15歳のころに読んだ漫画『アポストロフィS』(大島弓子)に出てきた言葉が心に残っていたんです。

《キスをするというのは、こういうこと。初恋とは、こういうこと》という少女っぽい気持ちが、恋をしたとき……優作に会ったとき、自然と浮かんできて。それが私の人生の幕開けでした。

次のページ