「ケアママ!」の登場人物。11月5日発売の単行本最終第4巻のカバー表紙に掲載予定 (c)2021 Riki Kusaka
「ケアママ!」の登場人物。11月5日発売の単行本最終第4巻のカバー表紙に掲載予定 (c)2021 Riki Kusaka

──だれもが人生というリングで闘い続けるレスラーというわけですね。

 取材の中で印象に残っている言葉があります。「いつだって初めてなんだよ」。お年寄りはベテランと思われがちですけど、年寄りになるのが初めてですし、間近に死を感じるのも初めて、日々衰えていくのだって初めてです。その現実に体力やいろんなものが弱っていく中で立ち向かわなきゃいけない。それは日々生きているだけですごい闘いだと思うんです。その人生最後の闘いに寄り添ってくれる心強い味方がヘルプマンたちです。

──「ヘルプマン!」が始まった03年から介護業界の変化について、どうごらんになりますか。

 介護保険制度が00年に、ほとんど見切り発車に近い状態でスタートして、携わった人は右往左往しながらだったと思うんですけど、見事に何とか形にしてくださって現場の力を感じました。介護自体が人を育てるのに最適なことも含めて、価値観そのものを変えてくれるような新しい若い人材がどんどん育ってきて、それがあるときから「漫画超え」になったんです。現場で身につけた本物の力ですから、漫画の絵空事ではないんですよ。だからもう絵空事はいらないなと思って、実際に見てきた人たちを取り上げる「取材記」を描き始めました。そしてフィクションの「ケアママ!」へ。現場は今、完全に漫画を超えています。

──大きな変化ですね。

 明治維新そっくりな介護維新とでも言うべき状況を若い人たちが作っています。かつてない超高齢社会を迎えて、自分たちが新しい時代の価値観を作っていく主体者だという意識をはっきり持っています。社会の塗り固められた既成概念を絶対に変えるぞ、という強い意志も感じますね。若い人たちには無尽蔵の知恵があって、そして、みんなやさしいんですよ。

──「ヘルプマン」の影響で介護職に就いた方が大勢いらっしゃいます。

 現場の方からそう言っていただくことがモチベーションになって描き続けてきました。気楽に手に取れる漫画が、社会を新しいほうに導いてくれる人の励みになって、ちょっとした火付け役のようなことができる。漫画の可能性を感じることができました。漫画を読むことで介護の予習ができました、親子2代で読んでいます、というような声を聞くと、ありがたく思います。私も取材が予習になって、なんの戸惑いもなく親の介護生活に入れました。介護保険制度を使うことで、こうして仕事も続けられています。知ることは重要です。編集者と、『家庭の医学』のように「一家に一冊ヘルプマン!」を目標にしてきました。そこまでは到達しませんでしたけれど、介護を知る意味でも、多くの方に読んでいただきたいですね。

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