EATの治療の様子 (堀田修クリニック提供)
EATの治療の様子 (堀田修クリニック提供)

 鼻の奥にある上咽頭(いんとう)。ここが炎症を起こすと、肩こりやめまいなどさまざまな疾患にもつながることから「万病のもと」といわれる。記者の40年来の皮膚疾患も、上咽頭炎が原因かもとのことで、「EAT」という治療を試してみた。

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「痛いっ!」「やめてくれぇ」と心の声は絶叫するが、声すら出ない。

 鼻の左の穴から、PCR検査のように先端に薬液をしみ込ませた脱脂綿がついた細い棒を突っ込まれ、何度も鼻の奥をこすられる。抜き取られた綿棒の先には赤い血が。

 ほっとしたのもつかの間、次は右の穴から、さらに太くて大きめの綿棒が口から突っ込まれ、のどの上奥をこすられる。取り出された脱脂綿には血がにじんでいた。

 涙目で、やっと終わった……と思った瞬間、のどの奥がひりつくように痛みだす。治療は数分だが、脱脂綿にしみ込ませてあった塩化亜鉛の刺激でのどの痛みは治療後も数時間続いた。これが万病のもととされる慢性上咽頭炎の治療法「EAT(上咽頭擦過療法)」だ。

 上咽頭とは、のどの上の鼻の奥にあり、鼻から吸った息が気管に向かう“曲がり角”の部分。炎症を起こしやすい部位で、この上咽頭に慢性の炎症があると、さまざまな体の不調の原因になるといわれている。

 片頭痛、めまい、肩こり、倦怠(けんたい)感、うつ、しびれなどだけではなく、関節痛、過敏性腸症候群、慢性湿疹、IgA腎症などの自己免疫疾患の症状……。こうした症状が、慢性上咽頭炎を治すことで劇的に改善した例が多数報告されているのだ。

 かく言う私も40年来の皮膚疾患(尋常性乾癬=かんせん)と3年前からIgA腎症に悩まされており、定期健康診断で医師に勧められてこの治療法にたどり着いた。

 EATは約60年前に耳鼻咽喉科の大学教授だった医師が発見し、多くの全身症状を改善させる治療法として注目された。しかし、上咽頭炎と全身の症状との関連を科学的に証明できず、1980年代に医療の表舞台から姿を消し、現在は耳鼻咽喉科の「教科書」にも載っていない。

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