春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「北海道」。

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 緊急事態宣言中ではありますが、7月31日~8月2日と独演会全国ツアーの北海道公演に行ってきました。札幌2回、旭川は1回公演。札幌34度。旭川なんて予想最高気温38度だって。折しも東京五輪マラソンの直前。タクシーの運転手さんが吐き捨てるように「歓迎してる人なんているんですかねぇーっ!?(怒) 人も密になるし(溜め息)」。憤怒の人を前にしてのうのうと「独演会に来ました」とは言えませんでしたな。あー。

 私が初めて北海道に来たのは2006年の7月。その頃の手帳を引っ張り出して見ると……1日から16日まで道内をハイエースで回る一座の旅興行、16日間で休みなし、計20公演やったそうです。マジか……。私の師匠・春風亭一朝が座頭(ざがしら)、三遊亭歌彦(現・歌奴)兄さん、紙切りの林家正楽師匠、太神楽曲芸の鏡味仙三郎・仙志郎師匠、お囃子の金山はる師匠。落語協会事務員Fさんと私が一番下っぱでした。

 16日間、移動しっぱなし。岩内町→江差町→紋別市→滝上町→士幌町→富良野市→当麻町→旭川市→愛別町→札幌市→北広島市→恵庭市→足寄町……途中、富良野には4泊。それぞれの街の公民館やホール、劇場、小学校・中学校の体育館や教室、老人ホームにも出張しての演芸公演です。大勢でワイワイいいながらの旅公演は楽しいもんです。

 しかし、食った、飲んだ。朝飯は宿で食べて、昼は楽屋でお弁当。差し入れで地元のお菓子やフルーツ。移動中のサービスエリアでソフトクリーム。夜は打ち上げを2、3軒。終わったら部屋で飲んで、どうかするとカップラーメン食べたりなんかして。知ってます? 完熟の夕張メロン半分食べた後にコーヒーシュガー舐めても甘く感じないんですよ。結局16日間で6キロ太って帰ってきました。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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