明桜の風間球打 (c)朝日新聞社
明桜の風間球打 (c)朝日新聞社
智弁学園の前川右京 (c)朝日新聞社
智弁学園の前川右京 (c)朝日新聞社
県岐阜商の高木翔斗 (c)朝日新聞社
県岐阜商の高木翔斗 (c)朝日新聞社

 高校球児たちの熱い夏が、2年ぶりに戻ってくる。8月9日から阪神甲子園球場で、第103回全国高校野球選手権大会が開催される。コロナ禍という未曽有の困難の中、ひときわ大きな輝きを放つ選手は誰なのか。高校野球の“目利き”たちに、注目選手と大会の展望を聞いた。

【写真】プロ注目のスラッガーは?

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 多くの高校野球ファンが待ちに待った、今年の夏の甲子園。聖地を目指して全国3603校が参加した地方大会では熱戦が続き、7月31日現在、代表校がほぼ出そろってきているが、森木大智(高知)や達孝太(天理・奈良)、小園健太(市和歌山)、畔柳亨丞(くろやなぎきょうすけ、中京大中京・愛知)ら、甲子園での活躍が期待された世代屈指の好投手の多くが涙をのんだ。しかし、そんななかでも、甲子園を沸かせる目玉選手がいる。

「流しのブルペンキャッチャー」として全国のアマチュア選手の取材を続けるスポーツライターの安倍昌彦氏が「高校生としてはケチのつけようがない」と激賞するのが、明桜(秋田)の風間球打(きゅうた)。最速157キロを誇る右の剛腕で、前評判どおり秋田大会を勝ち上がった。

「最高球速の報道ばかりが目立ちますが、変化球で緩急をつけられますし、ストレートを使わずに三振も奪える。アウトを取るまでの絵が描ける投手です。けっして球速だけで押す力任せのタイプではなく、牽制やクイックモーション、フィールディングもいい。非常に完成度が高いです」

 甲子園球場で2千試合以上を取材観戦してきたスポーツライターの楊順行氏もその潜在能力に驚きを隠さない。

「走者を出すとギアを上げて150キロ前後を投げる。その前でも十分すごい球を投げていたのに、まだ本気で投げていなかったのかと驚きました。秋田といえば2018年、吉田輝星の金足農旋風が記憶に新しいが、風間君がまた新たな風を起こすかもしれません」

 風間は野球一家で育ち、4兄弟の三男。兄弟全員に「球」の字が入るというから、まるで野球漫画の主人公のようだ。「球打」の字のごとく、打撃も非凡で中軸も担える。

 非の打ちどころがないように見えるが、「不安がないわけではない」と安倍氏は話す。それはコロナ禍と無関係ではない。

「レベルの高い相手との試合をあまり経験していない点です。コロナの影響でどこのチームも遠征ができず、春の東北大会も中止になったので、ほぼ県内でしか戦っていない。全国レベルが集う舞台で面食らうことがないか。自慢のストレートが強力打者に打たれたとき、心が揺れないかは気になる」

 東北悲願の初優勝をもたらすことができるか、注目したい。

 左腕では、今春の選抜にも出場した北海(南北海道)の木村大成。春の時点で、安倍氏は「私が見てきた中では、北海道の歴代ナンバーワン左腕」と語っていたが、さらなる成長が見られると話す。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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