手軽さを追求した結果が、ジャンルごとの分冊売り。「伝えたいことは人によってまちまちなので、必要なものだけをチョイスして活用していただければ」(同)

「看取り医がつくった人生を大切に過ごすためのエンディングノート」(文友舎)は、さまざまな看取りの現場を経験してきた熟練の医師が監修。基本的な項目に加え、本人や家族の署名欄付きの「終末期の医療・ケアについての事前指示書」といった項目など、終末医療に対する本人の希望、意思表示を重視する。

「よりよく生きるための断捨離式エンディング・ノート」(主婦と生活社)の著者は、断捨離セミナーの主宰者。悔いのない幸せな最期を迎えるための心構えなども解説しており、読み物としても、しっかり読める。

「読んで使えるあなたのエンディングノート」(水王舎)は相続専門の行政書士によるもので、実用的な内容となっている。最新の法律、制度を押さえながら、葬儀や墓に関する知識、医療や年金についても解説している。

「日本尊厳死協会の最期の望みをかなえるリビングウイルノート」(ブックマン社)は、終末期医療の“自己決定権”を推進する日本尊厳死協会が監修した。延命治療、尊厳死など終末期を迎えた際の医療選択についての意思表示を重視した内容で、小泉純一郎氏、倉本聰氏ら著名人に終末期への思いを聞いたインタビューも興味深い。

 エンディングノートは年代、志向、環境などさまざまな人のニーズに合わせ、進化している。自分にどれがふさわしいのか、参考にしてほしい。

 実は筆者もエンディングノートを購入し、母(77)に贈ったことがある。「普段だと触れにくいことを話す機会に」と思ったのだが、なかなか書き込む気配はない。

 ノートの話題を向けると、急に不機嫌になる。若い頃に看護師として働いて多くの人の臨終に間近で接し、死生観についてもさまざまに思うことがあるのかもしれない。

 エンディングノートという言葉が一般に広まったのは、11年に砂田麻美が監督したドキュメンタリー映画「エンディングノート」がきっかけだったとされる。あれから10年、超高齢化社会に突入した日本では、認知症などで正常な判断力を奪われる人も増えている。

 元気なうちに自らをかえりみることは悪いことではない。むしろ、“エチケット”になりつつあるかもしれない。(三枝雄子)

週刊朝日  2021年7月16日号