新型コロナウイルスの感染拡大もあり、思いを強くしたという。Bさんは両親がすでに他界し、前妻との間に子どもが1人いる。離れて暮らし、コミュニケーションをとる機会は少ないそうだが、ノートには子どもへのメッセージという意味合いもある。

「ノートは本棚の一番見えやすい所に置いています。自分が死んだ後、子どもがそれを読んで、僕がどんな思いを持っていたか知ってほしいなと。『もっと早く直接言えよ』と思われるかもしれませんが、生きているうちだからこそ言いにくいことってありますよね」

 筆者(三枝)は今回、エンディングノートをそれぞれ取り寄せてみた。

 エンディングノートとして2014年から6年連続で売り上げ1位を記録しているのが「もしものときのエンディングノート」(二見書房)だ。

「肩ひじ張らず、気軽な気持ちで書き込める、けれどきちんと大切な情報や思いを残せるものをめざして作りました。どのページから書き始めてもよく、高齢の方も使用しやすいように、文字をできるだけ大きくし、記入欄を広めにとることも心がけました」(二見書房の担当者)。日常生活での“備忘録”として使っている人も多いそうだ。

 高齢者向けのイメージが強いが、購買層を絞り込んでいるわけでない。若い人でも、ノートに書き込むことで自分の資産や健康状態などを整理できるからだ。

「万が一のための備えになることはもちろん、人生設計にも役立つと思います。一度書いたら終わりではなく、定期的に内容を見直し、情報を更新しながら長く使っていっていただきたい」(同)

 100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業が今年3月に売り出したのが、「もしもノート」だ。既往歴やかかりつけ医をまとめた「けんこうノート」やペットに関する「うちの子ノート」、「おかねノート」「おつきあいれんらくノート」「じぶんノート」とジャンル別に5種類が分冊となっている。SNSを中心に話題を呼んだ。

 同社によれば、コロナ禍で開発担当者が「自分がもし発症して隔離されたら……」と考えるようになったのが商品化のきっかけだったという。若い世代にもニーズがあると社内で盛り上がり、「『深刻になりすぎずに親子一緒に書けるものを作ろう』とコロナ禍で開発にとりかかった」(広報担当者)。

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