林:キム役ですよね。

高畑:はい。オーディションを受けて。

林:キムってみんなが憧れる役ですよね。背景はベトナム戦争で、オペラ「蝶々夫人」をアメリカ版に変えたと言われた名作です。「ミス・サイゴン」は何度も拝見していて、初演も見ました。ベトナム戦争の記憶があるらしきおじさんたちがスタンディングオベーションしてましたよ。

高畑:へぇ~、うらやましいです、初演を見られたなんて。

林:高畑さん、蜷川(幸雄)さんが亡くなる最後から2番目ぐらいのお芝居にお出になってましたよね。亀梨(和也)さんと。

高畑:はい。「青い種子は太陽のなかにある」(15年)ですね。

林:私、拝見しました。車いすに乗った蜷川さんをロビーでお見かけしましたけど、もう灰皿が飛ぶようなこともなかったですか。

高畑:いや、稽古場はカオスでした(笑)。さんざん罵倒されて、メチャクチャ言われました。

林:どんなことを言われたんですか。「カワイイ顔してるからって甘えてるんじゃねえよ!」とか、そんな感じ?

高畑:私、目が丸いじゃないですか。「そんなに目ェ開いて芝居してるんじゃねえ! 割りばし入れてやろうか」って(笑)。「割りばしかァ」と思って。

林:ある女優さんは、「おまえはブスなんだから、人の10倍稽古やれ」と言われた、と言ってましたよ。

高畑:悪口語録ができるぐらいでしたね(笑)。でも、お稽古の前からそういうものだと聞いていたので、むしろ先輩方が罵倒されてるのを見るほうがつらかったですね。

林:でも、憧れの蜷川さんだったんでしょう?

高畑:はい、一度は体験してみたかったんです。だから参加できてよかったと思っています。

林:寺山修司さんが若書きした、はっきり言っておもしろくない台本を、よくあれだけのお芝居にしたなと思って。

高畑:それは素晴らしい見方だと思います(笑)。私も、この話がこんなふうになるなんて!と、思いました。

林:高畑さんすごいですね。お仕事が切れることなく次々と、乗りに乗ってるという感じで。

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