高畑:そうですね……。ほんとにすっきりしないことが多い作品で、尾野真千子さんのパートも複雑な気持ちになりますよね。

林:あの方、ああいう役が多いですよね。是枝(裕和)監督の「そして父になる」でも、ジグジグしたお母さんの役だった気がします。でも、実生活では菅野美穂さんだけがお母さんなんですよね。

高畑:はい。菅野さんがお子さんをさばいてる感じなんか、すごいリアルだなと思って。

林:菅野さんは明るいお母さんで、このまま話が進んでいくのかなと思ったら、だんだんおかしくなっていきますよね。息子たちとあんなにうまくやってたのに、かわいそうやらコワいやらで。

高畑:そうですね。ちょっとずつボタンをかけ違えていく感じで。

林:撮影中、ほかの二人の女優さんとは会わなかったんですか。

高畑:お二人ともいつかご一緒したい先輩方だったんですけど、まったく撮影がかぶらなかったので、一回もお会いしてないんです。試写で作品を見て、私たちの家族とはぜんぜん違う空気で物語が進んでいったので、自分が出てない映画を見ているような感じでした。

林:この映画、烏丸せつこさんとか真行寺君枝さんが出てるんですよね。知らないと思いますけど、私の世代だと、烏丸せつこさんなんてバリバリの主演級の女優さんだし、真行寺君枝さんなんて資生堂のCMの「ゆれる、まなざし」ですよ。お母さんなら知ってるかもしれないけど。

高畑:いや、わかります。今もメチャクチャ美しいです。

林:でも、烏丸せつこさんには、私、びっくり。

高畑:大阪のおばちゃんの役ですもんね。

林:五木寛之先生原作の「四季・奈津子」とか、「マノン」(アベ・プレヴォー原作『マノン・レスコー』の映画化)とかに主演したんですよ。すごいグラマラスで演技もうまくて、顔は童顔だけど豊満な魅力で、すごく人気があったんです。その烏丸さんが、高畑さんのお母ちゃん役かァって思っちゃいましたよ(笑)。私と同い年ぐらいだから、ちょっとショックだった。

次のページ