林:そのとおりです。

福岡:そのかわり、個々の人間の生命の価値が尊重されないといけない。地球上に人間が増えすぎてしまって、個々の人間の生命を維持するためにたくさんの食料とかたくさんの資源が必要になって、そのことが地球環境に負荷をかけているという逆説もまた起こっている。個としての人間としての価値と自由さの引き換えに、SDGsとか気候変動とか、そういう責任も負わなければいけないということだと思います。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/1959年、東京都生まれ。京都大学卒業。ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授、ロックフェラー大学客員研究者。著書にベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』、『動的平衡』『できそこないの男たち』など多数。4月から朝日新聞で「福岡伸一の新・ドリトル先生物語 ドリトル先生ガラパゴスを救う」連載中。ノンフィクション版の紀行『生命海流 GALAPAGOS』も近日刊行予定。

>>【後編/福岡伸一「自分の免疫が最高のワクチン」 活性化に大切な「リラックス」】へ続く

週刊朝日  2021年5月28日号より抜粋