林:へぇ~、おもしろい。

福岡:そして3人目のヒーローがドリトル先生なんです。

林:まあ、架空の人。

福岡:はい、『ドリトル先生』という童話の主人公ですね。私はドリトル先生が好きすぎて、コロナでニューヨークに閉じ込められているときに、ドリトル先生の新しい物語を書こうと思いついて、朝日新聞でこの4月から連載を始めたんです。

林:「福岡伸一の新・ドリトル先生物語」。先生がドリトル先生の新しい物語を書かれるんですね。何がきっかけだったんですか。

福岡:コロナが本格化する少し前、去年の3月ぐらいにガラパゴス諸島に行ったんです。ガラパゴス諸島という場所も生物学者にとっては憧れの場所で、ダーウィンが200年ぐらい前に行って進化論の着想を得た場所なんですけど、私も長いあいだ行きたいなと願いつつ、南米のエクアドルの海上千キロも先にあるので、おいそれとは行けないんですね。あそこは地球に残された手つかずの自然がある最後の楽園で、ようやく行った憧れの地で、溶岩台地の上に不思議な生物が生命を展開している姿を目の当たりにして感動しました。その旅を終えてニューヨークに戻ったらコロナが襲ってきて、数カ月間封じ込められちゃったんです。

林:まあ。

福岡:そのときに、なぜガラパゴス諸島がイギリスとかアメリカの手に落ちずに自然が守られたのかをいろいろ考えてたら、「そうだ、これはドリトル先生と同時代の出来事だから、ドリトル先生の活躍でガラパゴスを救ったという物語をつくろう」と思ったんです。

林:ほぉ~。壮大なお話ですね。生き物を追う先生の熱が伝わってきますよ。先生は子どものときから虫が大好きだったんですよね。虫少年って頭がよくて、養老孟司先生も虫少年だったんですよね。

福岡:養老先生とか奥本大三郎さん(フランス文学者)とか、虫少年はたくさんいますね。いまや“虫老人”ですけど(笑)。

林:先生は、お子さんのときにご両親が顕微鏡をプレゼントしてくださったんだそうですね。

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