たとえば、コロナ禍では非対面が推奨されるため、還付金詐欺などでATMを使わせて手続きさせる絶好の理由になる。コロナへの不安が大きくなるほど、詐欺グループにとってはだましやすい状況になるというわけだ。

 ちなみにワクチン詐欺が頻発した今年1月は新規感染者がピークを迎えていたうえ、医療従事者へのワクチン先行接種が報じられた時期。不安につけこむにはまさにうってつけのタイミングだった。

 昨春以降に頻発した「水道管詐欺」の電話がかかり始めたのは、新型コロナウイルス対応の特別措置法が成立した昨年3月ごろだった。これにより緊急事態宣言の発出が検討され始め、人々の不安も高まっていた時期と一致している。その手口はこうだ。

 群馬県伊勢崎市の住宅に水道局員を装った男が訪れ、「水道管に新型コロナウイルスが付着しているので、防菌できる水道管と取り換えたほうがいい」とうそを言って見積書を示した。不審に思った住人は支払いを断り、警察に相談して事なきを得た。

 同じ群馬県内で、70代女性が電話で、威圧的な口調で「新型コロナウイルスが水道水に混ざっている可能性がある。混ざっていた場合は濾過する必要がある。今から調査に行くので、お宅の場所を教えてほしい」と言われた。女性はおかしいと思い、住所は教えず断ったら、電話はかかってこなくなったという。

■同情や優しさも狙われている

 中でも、関西地区の消費生活センターに届けられた詐欺情報は手が込んでいる。

 情報提供者の40代女性の自宅ポストに「期間限定キャンペーンで排水管の高圧洗浄が3千円」などと書かれたチラシが投函されていた。電話で問い合わせると、「排水管が新型コロナウイルスに汚染されている事例が、地域で多数発生している」と言われ、高額の洗浄料を提示されたという。

 全国の新規感染者数が1日2千人を超え、営業縮小した飲食店に食材を提供する生産者が悲鳴を上げていた昨秋には、「送り付け詐欺」が多数発生した。

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