■身を守るために正しい情報知る

 この事件は、自称パート店員の70代の女が詐欺グループと共謀し、神奈川県在住の70代女性宅に電話をかけた。男が女性の長男を名乗って「女性トラブルに巻き込まれてお金を払うことになった」と言い、70代の女は弁護士事務所の職員になりすまし、「息子さんから相談を受けている。200万円が必要です」と話し、その後女性宅を訪れ、現金200万円をだまし取ろうとしたという。

 テレビのニュースがコロナ一色となり、ほかの犯罪状況が報じられていないこと、密を回避するために詐欺被害への注意を喚起する講座が軒並み中止になっていることなども、詐欺グループにとってはいいニュースだと多田氏は言う。

 コロナ禍はもうしばらく続くことが見込まれる中、ワクチン対策の遅れや感染状況の悪化、変異株のまん延など不安は増すばかりだ。

 そうした状況で、詐欺に遭わないためにも、正しい情報を知ることが必要だ。

 少なくとも、コロナワクチンにかかる費用は全額が公費負担となっており、接種は無料だ。もし、コロナワクチンの接種でお金を要求されたら、詐欺を疑ったほうがいい。

 また、厚労省や自治体の役所などの行政機関が、電話やメールで個人情報を求めることもない。市区町村からは、「接種券」や「接種のお知らせ」が届く。それ以外のケースは、やはり疑うに越したことはない。

 さらには、息子、親類縁者を名乗ってお金の話を出されたら、いったん切ってかけ直すくらいの心構えは必要だ。

 疑っては悪い、と考えるその優しさにも詐欺グループはつけこんでくるのだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年5月21日号