雑誌記者を描く『激震』 阪神大震災、地下鉄サリン…分岐点の1995年 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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雑誌記者を描く『激震』 阪神大震災、地下鉄サリン…分岐点の1995年

南陀楼綾繁週刊朝日#読書
西村健(にしむら・けん)/1965年、福岡市生まれ。フリーライターを経て、96年、『ビンゴ』で作家デビュー。2011年の『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞を受賞。著書に『ヤマの疾風』『目撃』『バスへ誘う男』など。(写真提供 講談社)

西村健(にしむら・けん)/1965年、福岡市生まれ。フリーライターを経て、96年、『ビンゴ』で作家デビュー。2011年の『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞を受賞。著書に『ヤマの疾風』『目撃』『バスへ誘う男』など。(写真提供 講談社)

「1995年は、戦後の秩序が崩れる節目の年だったと思います」と、作家の西村健さんは言う。

 書き下ろし長編『激震』(講談社/2090円・税込み)は、この年に起きた阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件を、フリーライター・古毛冴樹(こもさえき)が取材する様を描く。横山秀夫『クライマーズ・ハイ』を彷彿させるが、女子高生風俗の話からはじまるのが西村さんらしい。

「当時、私が仕事をしていた講談社の『Views』は、戦争から下世話な話題までなんでも扱う雑誌でした(笑)。いろんな取材をさせてもらった経験が、作家になってから生きています」

 自身は阪神大震災とサリン事件を取材する機会はなかったと言うが、当時、現場を取材した記者たちに会い、話を聞いた。

「震災直後の神戸に入るために六甲山を迂回するとか、サリンを撒いた現場に行った記者の瞳孔が収縮したなど、その場にいた人だけが分かるディテールを作品に反映することができました」

 記者が被災地で非日常に身を置いた後、酒を飲んで背負い込んだものを落とす場面も印象的だ。

「取材相手に親身に向き合わないと取材はできないけど、いったん距離を置かないと原稿を書くことはできないんです」

 西村さんはライターになる以前、労働省の役人として神戸に赴任していたことがあった。

「被害の大きかった長田区にもよく行っていました。知っている土地だけに、取材に行けと言われても断ったかもしれませんね。今回、久しぶりに神戸を歩きましたが、当時の面影はまったくありませんでした。それだけ大きく破壊されたのだと、実感しました」

 古毛は被災現場で会った余寿々絵(あまりすずえ)の目に惹きつけられて、父親殺しの容疑で逃亡する彼女の跡を追う。一方、サリン事件を起こしたオウム真理教の信者である桐田純人にも取材を重ねる。

「寿々絵が焼け跡から立ち上がり、自分らしく生きようとするのに対して、桐田はバブル崩壊後の世の中で信じられるものを求めるうちに、破滅に向かっていきます。どちらも1995年を象徴する存在です。実はこの作品の主人公はこの二人で、古毛はそれを伝える役割なんです」


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