例えば、東京ガスの公式サイトで、先ほどと同じ条件で電気とガスのセット契約の費用を試算すると、年約1万円安くなるプランを勧められた。電気とガスのセットだと電気代の基本料金が割引となる。携帯やネットサービスなどとのセットでは、使った電気に応じて、提携するサービスで利用できるポイントがもらえるプランも多い。

 もちろん、大手電力会社も負けてはいない。

 関西電力は3月1日から、電気やガスの契約者向けに電子商取引(EC)サービス「かんでん暮らしモール」を始めた。住宅のリフォームや保険、家事の支援といった35項目のサービスを提供。営業本部リビング営業部長の丸山直子さんは次のように説明する。

「暮らしに役立つサービスをそろえました。困りごとがあったときにサービス会社を探す手間も省けますし、利用すると電気料金の支払いなどに充てられるポイントがたまる特典もあります。サービスはこれからも順次、拡充していく予定です」

 東京電力も力を入れている。自由化後の電力やガスの新プラン契約者向けに、電気設備をはじめ、水まわりやカギなどのトラブルに24時間態勢で駆けつけ、ほぼ無料で対応する。4月1日からは一部サービスの対象エリアを関西にも広げた。

 販売会社である東京電力エナジーパートナー販売本部お客さま営業部の木村千秋マネジャーは「自由化直後の値下げ競争もほぼ一巡し、価格よりも、どんな付加価値をつけられるかが問われています。サービスを通じて、何かあった時に頼ってもらえる会社になりたい」とし、消費者に寄り添うサービスを強化していく構えだ。

 中部電力は4月、三菱商事と共同で高齢者の見守りや金融商品の提案など生活関連サービスを担う新会社を設立した。

 こうしたサービス合戦の背景には、「大手電力会社はもともと、ライバルのガス会社に比べ一般家庭との接点が少なかった」(前出のエネルギー業界関係者)ことがある。業種やエリアを越えて利用者を獲得しないと、大手といえども生き残れない時代に入った。

 電力やガスの契約をめぐっては、トラブルも少なくない。国民生活センターに寄せられる相談は増加傾向にある。

 前出の中田さんは、契約切り替えを求める聞き慣れない会社からの勧誘電話や訪問営業に注意が必要だと呼びかける。

「いきなり『検針票を見せてください』と言われたら警戒しましょう。契約者の名前や住所のほか、『供給地点特定番号』が記載されています。番号が漏れると、契約を勝手に切り替えられてしまう恐れもある。重要な個人情報ですので安易に教えてはいけません」

 しっかりと見極めて自分に合ったサービスを選びたい。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2021年4月23日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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