企業が社員のために毎月一定の掛け金(上限5万5千円)を出し、それを元手に退職金や年金を準備できるのがDC制度だ。運用益に税金がかからないといった税優遇もあり、老後資金を増やすためにも活用しない手はない。改めて上手な利用法を探ってみよう。

 まずは基本的な仕組みをおさらいする。DCでは、どの金融商品で運用するかは社員自身が選ぶ。「預金」「保険」「投資信託(投信)」の三つのカテゴリーで用意されている数十本の商品から選択。選んだ商品の運用によって将来の受取額が決まる。つまり“運用責任”は社員が負う。

「それなら損しない元本確保型の預金や保険がいい」と思うだろう。実際、加入者の拠出総額の約半分が預金や保険となっている。しかし、DCに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の加藤博氏は、これだと損をする可能性が高いという。

「大企業のDCは厚生年金基金や適格退職年金の受け皿として作られたものが多く、制度導入時に『想定利回り』という数字が社員に示されています。該当するDCに入っている方は、ぜひその数字を調べてください」

 想定利回りとは、旧制度から移行する場合、旧制度と同じ水準の金額となるために必要な運用利回りのこと。つまり、想定利回りを現実の利回りが下回っていれば、旧制度より少ない金額しか受け取れないことになる。

「想定利回りは1.75%~2.5%ぐらいに設定している企業が多い。元本確保型の人はもちろん、これより下なら旧制度に“負けて”います。受け取れるはずだった金額が目減りしていることになります」(加藤氏)

 それだけではない。元本確保型だと入社同期や同僚から後れをとりかねない。

 DC加入者は、金融機関の専用サイトで自分の運用状況を見ることができる。サイトには「運用実績・利回り分布グラフ」といったコーナーがあり、その金融機関で加入している人の利回り分布がわかるようになっている。

 加藤氏が入手した、ある金融機関の直近のそれを見ると、突出している「山」が二つあった。利回りが「0%」と「10%以上」の部分だ。

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