教育ジャーナリストの神戸悟さんはこう見る。

「大学入学共通テストの平均点が高かったことが関東圏や都市部の公立校で強気の出願につながり、合格者が増えたのではないか。他方で、中国・四国など地方では志願者が減っており、合格高校にもその影響が出ていると思います」

 公立校の躍進について、大学通信の安田賢治常務はこう見る。

「関東や近畿、中部で志願者が増えており、合格者も増えている。緊急事態宣言が出ている大都市の受験生は東京に出てくることを気にしなかった一方で、宣言の出ていない地域では東大を敬遠した可能性があります」 

 京大では北野(大阪)が4年連続でトップだが、私立中高一貫校で合格者の増加が目立つ。特に西大和学園(奈良)は京大と東大で増やし、それぞれ4位、5位に入った。神戸さんは「東大に加え、京大にも合格者を出す余裕が出てきた。横綱のようになってきている」と見る。

 新型コロナの感染拡大は、個別試験(2次試験)の実施にも影響を与えた。横浜国立大は実施を取りやめた。宇都宮大と、信州大の2学部も中止した。

 横浜国立大に合格した高校を見ると、トップは柏陽32人(前年17人)で、横浜翠嵐29人(同13人)、湘南25人(同19人)と続いた。県内進学校が合格者を増やし、上位を占めた。教育ジャーナリストの中山まち子さんは言う。

「基礎学力のある生徒が多い進学校を中心に合格者が増えた。2次試験で挽回しようとしていた生徒は残念な思いをしたはず。今年の入試は英語民間試験や記述問題の導入見送りもあり、最後まで入試に振り回された受験生も少なくなかったと思います」

 以下は、10日時点での東大合格者数上位20校。

(1)○開成(東京)            144人(106人)
(2)○灘 (兵庫)             97人(75人)
(3)○麻布(東京)             82人(49人)
(4)○聖光学院(神奈川)       79人(69人) 
(5)○西大和学園(奈良)       76人(51人)
(6)○桜蔭(東京)             71人(61人)
(7)○渋谷教育学園幕張(千葉) 67人(46人)
(8) 日比谷(東京)            63人(48人)
(9)○駒場東邦(東京)         56人(38人)
(10)横浜翠嵐(神奈川)        49人(44人)
(11)○海城(東京)            47人(43人)
(11)○栄光学園(神奈川)      47人(34人)
(13) 浦和・県立(埼玉)      46人(25人)
(13)○浅野(神奈川)          46人(37人)
(15)○久留米大附設(福岡)    36人(27人)
(16)○渋谷教育学園渋谷(東京)33人(28人)
(16)○早稲田(東京)          33人(24人)
(18)○ラ・サール(鹿児島)    32人(23人)
(19) 岡崎(愛知)            31人(19人)
(19)○甲陽学院(兵庫)        31人(17人)
(合格実績のある学校への週刊朝日とサンデー毎日、大学通信の合同調査を基にした速報値で、数値は今後変動する可能性がある。○は私立。右端のかっこ内は現役合格者数)
(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日3月26日増大号の記事に加筆

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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