ちなみに、オリコンによる2020年のシングルCDの年間売上上位曲でミリオンを記録した曲は以下の通り。

「Imitation Rain/D.D.」SixTONES vs Snow Man(176.1万枚)
「失恋、ありがとう」AKB48(118.2万枚)
「カイト」嵐(114.8万枚)
「しあわせの保護色」乃木坂46(111.5万枚)
「KISSIN‘MY LIPS/Stories」Snow Man(100.2万枚)

 前出の三杉さんは、ヒット曲はCDセールスとネットでの拡散に二極化していると語る。

「CDの売り上げは、コアなファンが支える市場になりました。アイドルが典型例ですが、広く浅くではなく、コアなファンの客単価を上げていく仕組みになっています。一方、ネットでのヒットの拡がりを重視する『うっせぇわ』や『香水』は、TikTokやYouTubeなどで一般層が『歌ってみた』『踊ってみた』といった動画に参加し、爆発的に広がりを見せていく要素が大きいです。そうした輪の中に芸能人も加わり、さらに話題が盛り上がるケースもあります」

 前出の宗像さんは、曲の完成度が大切だと語る。

「Adoさんのように、ネットから火が付いたヨルシカやすとぷり、ずっと真夜中でいいのに。など、顔出ししていないアーティストも多いです。YOASOBIも顔出ししたのはデビューから半年後。パーソナリティを出さない一方で、世界観や楽曲を作り込んでいく。キャッチーなフレーズを入口にして、世界観で魅了するための作り込みが問われる時代になっていると思います。Adoさんもすでに4曲を配信していますが、その世界観に共感するファンが増えているのではないかと思います」

 ただし、入口がキャッチ―なことでの難しさも抱えるという意見もある。

「アーティストではなく、曲にファンがつく時代になってきました。ワンフレーズでいきなり時代に乗れる代わりに、実力が伴わなかったりすると他の曲に興味を持ってもらえず、すぐに飽きられてしまう。アーティストにとってはシビアな時代とも言えます」(前出の三杉さん)

 かなり気が早いけれども、今年の「紅白」では「うっせぇわ!」が響き、キャッチーなフレーズのネット発ヒット曲がズラリと並ぶ可能性も、ある。(本誌・太田サトル)

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