自民党の石破茂氏(c)朝日新聞社
自民党の石破茂氏(c)朝日新聞社

 自民党石破茂氏は、米国の政権移行が終わったタイミングで、日米地位協定の改定を提起するべきだと主張する。

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 ジョー・バイデン氏が米国大統領にほぼ決まったと言われています。新大統領が決定し、一連の政権移行が終わったら、日本として日米地位協定の改定を提起することを真剣に考えるべきだと思います。

 締結してから60年間、日本側から米国に正式に改定を提起したことは一度もありません。

 しかしたとえば、米軍機が事故を起こして国会議事堂に落下したとしても、米軍関係者が先に現場を確保してしまったら、日本の警察当局や自衛隊が検証することはできません。

 東京の上空も、米軍機は飛び回れるのに、自衛隊機や民間機の空域は制限されている。このような状態で、取り返しのつかない大事故、大事件が起きてからでは遅いのです。

 日本の1都9県にまたがる上空の管制をいつまでも米軍が行っているのはおかしい。だけど、こんなものだとみんな思っている。

 ドイツもイタリアも同じ敗戦国ですが、冷戦期にNATOという集団的自衛権行使の枠組みを持つことによって、地位協定の改定を成し遂げました。日本だけが戦後75年たってもそのままです。日本は米国に守ってもらってるんだから、あんまり強いことも言えないよねっていうのが「右」でも「左」でも染み付いていませんか。

 では、本当に米国に守ってもらっているのか。米国は日本を守るために、日本に米軍を置いているわけではない。米国の国益のため、米国の世界戦略の一環として置いている。

 横須賀も佐世保も嘉手納も横田も三沢も岩国も、基地がみんななければ、米国の世界戦略は成り立たないわけです。

 そして在日米軍基地は、我々国民の莫大(ばくだい)な税金によって、我々の自衛隊が守っている。だから、米国から金を出せと言われて、そうでございますか、とはならないはずです。

 地位協定の話も、集団的自衛権も、真に独立した国とは何なのかということが問われているのであって、これは右も左も関係ない。

 もし、政権として優先課題であるとして決断すれば、今の日米関係であれば少なくとも議論の枠組みを作ることは可能でしょう。

 本来、国の独立を守るというのは、苦痛と負担を伴うことです。でも、それは大事なことだと思っています。

(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年12月4日号

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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